著者
倉田 賢生 井上 昇 近藤 聡子 斧沢 京子 谷 直樹 南 順也 大石 涼 長野 祐久 荒木 弘 桑野 博行 福岡市民病院COVID-19ワクチンワーキンググループ
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.65-73, 2022-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本研究は,トジナメラン被接種者に出現した副反応の経日的な調査,および副反応の出現率に影響する共変量の探索を目的とした.2021年3月から4月において,福岡市民病院にて本ワクチンが接種された職員を対象に,注射部位および全身の副反応(13項目)を接種当日(day 1),day 2,day 3,day 4,およびday 5以降ごとに調査した.副反応の出現率は,ほとんどがday2において最高値を認めた.1回目接種後(および2回目接種後)のday2での出現率は,注射部位の疼痛が86.0%(86.9%),倦怠感が33.2%(76.9%),頭痛が14.3%(56.9%),筋肉痛が37.0%(57.2%),発熱が5.2%(51.1%),および関節痛が9.3%(43.9%)であった.2回目接種後は1回目と比較して副反応が遷延する頻度,および中等度以上の副反応(疼痛,腫脹,皮疹を除く)が出現した被接種者の割合がそれぞれ有意に高かった.各副反応の出現率に性差,年齢差,および接種回数による差のいずれかが存在することが認められた.特に全身倦怠感および頭痛の出現率は,女性,55歳以下の年齢および2回目接種のすべてにおいて有意に増加した.女性および2回目接種は,影響する副反応の出現率の上昇のみをもたらす共変量であった.本ワクチンの副反応の出現率は,2回目接種翌日における女性および55歳以下の被接種者において高いことが示された.本研究結果は,本ワクチン被接種者の副反応の予測,および接種日の設定の際に有用であると考えられる.
著者
ナマンガラ ボニフェス 横山 直明 池原 譲 田口 修 辻村 邦夫 杉本 千尋 井上 昇
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.751-759, 2008-08-25
参考文献数
35
被引用文献数
5

アフリカトリパノソーマ症(AT)は家畜およびヒトの健康を著しく損なう,獣医学および医学上きわめて重要な熱帯原虫病である.しかしながらATに有効なワクチンおよび安全な治療薬はない.野生動物やアフリカ在来品種のウシではATに自然抵抗性を有することが知られているが,獲得免疫によるAT抵抗性メカニズムは不明である.本研究ではTrypanosoma congolense (Tc)急性感染期マウスにおけるCD4/CD25陽性T細胞の役割を,抗CD25モノクローナル抗体(抗CD25)処置によって同細胞群を選択的に排除することで解析した.その結果,抗CD25処置群では感染初期の末梢血液中におけるTc増殖が有意に抑制され,生存日数の延長が観察された.また,抗CD25処置群のサイトカイン応答ならびにTc抗原特異的抗体応答はいずれも対照群とは逆にTh1タイプに偏っていた.以上の結果はTc感染抵抗性に感染初期のTh1タイプ免疫応答活性化が必要であることを示唆している.