著者
恵川 淳二 井上 聡己 川口 昌彦 瓦口 至孝
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、テトラサイクリン系抗生物質であるミノサイクリンの脳への直接投与が頭部外傷モデルのマウスの運動機能、高次脳機能を改善するかについての研究を行なっている。評価の方法としては、行動実験、組織学的評価、生化学的評価を用いて行う計画としている。現在、動物の倫理的扱いに十分留意してし、実験を行なっている。頭部外傷モデルは、安定した作成が可能となった。現在、inverted gird試験を用いた行動実験を行なっている。Invereted grid 試験の評価方法としては、体重×落下までの時間を計算し、頭部外傷前からの変化率で評価を行なっている。個体による差が非常に大きく、サンプル数が不十分なため、統計学的にはミノサイクリン投与群と生理食塩水投与群で有意な差は見られていないが、ややミノサイクリン投与群で良い結果を示している傾向がある。今後、サンプル数を増やして行く必要がある。組織学的評価についても、手技的には大きな問題を生じず行うことができるようになった。頭部外傷48時間後の外傷部のミクログリアやアストロサイトの活性の評価及びHE染色を用いた欠損体積について検討を行なっているところである。欠損部体積については、ミノサイクリン投与群で小さい傾向にあるが、こちらについてもサンプル数を増やして統計学的検討を行って行く必要がある。生化学的評価は、組織学的評価終了後に検討して行く予定にしている。
著者
上田 順宏 今井 裕一郎 後藤 安宣 青木 久美子 山川 延宏 井上 聡己 山本 一彦 川口 昌彦 桐田 忠昭
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.37-44, 2014-06-15 (Released:2014-07-25)
参考文献数
28

本研究の目的は,術後の消化管運動と栄養状態に対する大建中湯(DKT)の効果について検討することである。2008年3月から2013年5月の間に,進行口腔癌の切除後に生じる欠損部に対して遊離組織移植による即時再建術を施行した40例を対象とした。20例には術翌日からDKT 15g/dを投与した。他の20例はDKTを投与しない対照群とした。消化管機能として腸蠕動音,排ガスおよび排便の確認時期,経腸栄養(EN)の開始時期,術後2週の体重減少量および体重減少率について後向きに検討した。その結果,腸蠕動音(p<0.001),排ガス(p<0.005),ENの開始(p<0.01),排便(p<0.005)はDKT投与群で早期に確認された。また,術後2週の体重変化量(p<0.05),体重変化率(p<0.05)ともDKT投与群で有意に抑えられていた。術前化学放射線療法や手術侵襲は,これらの指標に影響を及ぼさなかった。以上の結果より,DKTは進行口腔癌患者における遊離組織移植による再建術後の消化管機能の改善と体重の維持に有用であることが示唆された。