著者
井上 雄吉
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.228-233, 2016 (Released:2016-08-10)
参考文献数
40

Repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS) has the potentials to change brain excitability, inducing plasticity. In recent years, the use of rTMS has been increased for basic research and clinical applications, such as post–stroke complicatons, including hemiparesis, aphasia or unilateral spatial neglect.rTMS is classified into inhibitory low–frequency (≦1Hz) and facilitatory high–frequency rTMS (≧5Hz), totally named as conventional rTMS (c–rTMS), in which stimulation pattern is regular. In contrast, patterned rTMS (p–rTMS) has irregularly modified stimulation pattern. The after–effect of rTMS, lasting beyond stimulation time, depends on the number, intensity and frequency of stimulation pulses, contributing to clinical efficacy of rTMS. Lastly, p–rTMS is used much often than c–rTMS, because the after–effect of the former is more than the latter in duration and magnitude of the effect. The author and collegue use theta burst stimulation (TBS) (Huang et al, 2005) among various p–rTMS. TBS is classified into inhibitory continuous TBS (cTBS) and facilitatory intermittent TBS (iTBS). In this report, in addition to c–rTMS, the efficacies of cTBS are described for unilateral spatial neglect (USN) or non–fluent aphasia, stimulating over posterior parietal cortex or Brodmann area 45 (BA45) on unaffected hemisphere, respectively. Also, in recent, we have reported the effect for post–stroke ataxia of hybrid therapy of iTBS over the motor cortex on affected hemisphere combined with integrated volitional control electrical stimulation (IVES).rTMS (in particular, TBS) is expected a promising useful therapy for rehabilitation.
著者
井上 雄吉
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.246-256, 2012-06-30 (Released:2013-07-01)
参考文献数
46

失語症 (主に非流暢性失語症) に対する反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) 治療について自験例を含めて review を行い, その有用性や問題点, 今後の課題について報告した。両側大脳半球は健常では互いに抑制・拮抗し合って均衡した状態にあるが, 一側 (失語症では主に左) 半球に傷害が生じると, 脱抑制状態となった対側 (主に右) 半球の相同部位から過剰な抑制を受け, さらに機能障害が増強する。この過活動状態となった右半球を低頻度 rTMS で抑制し, 不均衡状態を是正しようというのが rTMS 治療の原理であり, paradoxical functional facilitation (PFF) の一つと考えられる。右半球の失語症の回復に対する作用は病巣の分布や部位による影響を受けるが, 失語症の回復に抑制的 (maladaptive) に働くこともある。半球間の不均衡は失語症の回復に大きく関係しており, その是正のための右半球の Broca 野相同部位 (BA 45) に対する低頻度 rTMS は失語症の安全で有用な補助療法の一つと考えられ, 今後の臨床応用が期待される。
著者
井上 雄吉
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.542-553, 2007-09-18 (Released:2007-10-09)
参考文献数
40
被引用文献数
5 3

半側空間無視(USN)に対する1 Hz反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果や,局所脳血流量(rCBF)の変化を調べてUSNの回復過程に関わる脳内機構について検討した.対象は,右大脳半球の血管障害22 例(脳梗塞19 例,脳出血3 例)で,発症からrTMS開始までが70~220 日(平均128.3 日)であった.rTMSは,左頭頂後部(P5)を運動閾値の90%の強度で,1 Hz,500発刺激を隔日で計7セッション施行した(2 例で2 クール施行).評価は,Behavioural inattention test(BIT)や視覚的探索課題-反応時間,Xe-CT(cold法)などを用いて行った.結果では,抹消試験や模写試験,視覚探索反応時間は,rTMS施行1 週~2 週後から改善を認め,その効果は終了2 週後も持続していた.rCBFでは,rTMS施行後に右小脳半球で有意の増加を認めた.以上より,健側半球への低頻度rTMSはUSNに対して有効と思われ,USNの回復には小脳を含む脳内機構の改善が重要と考えられた.
著者
井上 雄吉 荒木 一富 西田 勇人 藤田 明美 藤本 万理 青山 麗子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.496-509, 2010-12-31 (Released:2012-01-05)
参考文献数
41
被引用文献数
2

表出障害が主体の失語症に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) の効果について検討した。対象は左大脳半球の主に慢性期脳血管障害 20 例 (梗塞 12 例,出血 8 例,全例右利き) で,発症から rTMS 開始までが 68~2793 日 (平均 591.6 日) であった。rTMS は健側右半球の Broca 野相同部位の Brodmann 45 野に,運動閾値の 90 %の強度で,1Hz,900 発刺激を計 10 セッション行った。評価は表出面を中心に,40 個の絵の呼称や短縮版 WAB,標準失語症検査 (SLTA) で行い,rTMS 前後の局所脳血流量 (rCBF) も調べた。結果は,絵の呼称では脳梗塞例全体で rTMS 施行 2 週後から有意の改善を認め,効果は終了 4 週後も持続し,SLTA でも有意の改善を認めた。脳出血例では有意の変化はなかった。脳梗塞例では rTMS 後に左基底核 rCBF の有意の増加を認めた。健側半球の低頻度 rTMS は,特に左基底核が保たれた慢性期脳梗塞に有効であり,失語症の改善に左基底核の関与が示唆された。
著者
井上 雄吉
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.542-553, 2007-09-18
被引用文献数
4 3

半側空間無視(USN)に対する1Hz反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果や,局所脳血流量(rCBF)の変化を調べてUSNの回復過程に関わる脳内機構について検討した.対象は,右大脳半球の血管障害22例(脳梗塞19例,脳出血3例)で,発症からrTMS開始までが70〜220日(平均128.3日)であった.rTMSは,左頭頂後部(P5)を運動閾値の90%の強度で,1Hz,500発刺激を隔日で計7セッション施行した(2例で2クール施行).評価は,Behavioural inattention test (BIT)や視覚的探索課題-反応時間,Xe-CT(cold法)などを用いて行った.結果では,抹消試験や模写試験,視覚探索反応時問は,rTMS施行1週〜2週後から改善を認め,その効果は終了2週後も持続していた.rCBFでは,ITMS施行後に右小脳半球で有意の増加を認めた.以上より,健側半球への低頻度rTMSはUSNに対して有効と思われ,USNの回復には小脳を含む脳内機構の改善が重要と考えられた.