著者
澤田 明久 井上 雅美
出版者
一般社団法人 日本造血細胞移植学会
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-11, 2014
被引用文献数
1

1964年にEpstein-Barr virus(EBV)が発見されて半世紀が経った。慢性活動性EBV 感染症(chronic active EBV infection; CAEBV) は「EBV 関連T/NK細胞リンパ増殖症(EBV-associated T- or NK-cell lymphoproliferative diseases; EBV+T/NK細胞LPDs)」のひとつで,かつ典型的疾患である。診断は「Okanoらの診断ガイドライン(2005年)」に従う。確定診断にEBV+T/NK細胞の増殖(実際的にはEBV 量の高値とT/NK細胞への感染)を証明する必要がある。しかし,末梢血を用いる検査はいまだ保険未収載であり,病変組織の生検は侵襲を伴う。急変するリスクがあり,診断がつけば免疫化学療法により症状の鎮静化を図りつつ,同種hematopoietic stem cell transplantation(HSCT)の準備を併行して進めることが肝要である。多剤併用化学療法,同種HSCTと治療を進める中で,十分な症状のコントロールが得られない場合には躊躇なく緊急移植に踏み切る。前処置はreduced-intensity conditioningがよい。移植成績は骨髄移植と臍帯血移植で差はなく,全生存率>90%と良好であり,成人例(~40 歳)の場合も小児と同様の治療戦略で遜色ない成績が得られつつある。
著者
上田 三穂 小林 裕 吉森 邦彰 高橋 由布子 近山 達 池田 元美 魚嶋 伸彦 木村 晋也 田中 耕治 和田 勝也 小沢 勝 近藤 元治 河 敬世 井上 雅美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.657-662, 1997 (Released:2009-04-28)
参考文献数
15

Chronic active Epstein-Barr virus infection(以下CAEBV)の経過中にEBV感染T細胞の腫瘍化を起こした1例を経験した。症例は20歳女性で発熱,陰部潰瘍,口腔内潰瘍などのベーチェット病様症状で来院した。頚部リンパ節腫脹を認め,生検では炎症性変化であった。EBV抗体価よりCAEBVと診断し,PSL, acyclovirの投与をおこなった。一旦症状は改善したが,発症約10カ月後に汎血球減少を呈し,骨髄にて異常細胞を35%認めた。TCR-β遺伝子の再構成を認めT細胞腫瘍と診断した。化学療法にて骨髄は寛解となったが,全身のリンパ節の再腫脹を認め,約3カ月の経過で治療抵抗性のため死亡した。骨髄中の腫瘍細胞でのEBVのterminal probeを用いたSouthern blottingにてsingle bandが検出され,単クローン性が証明されたことより,EBV感染T細胞の腫瘍化と考えられた。本邦の成人例では稀であり,報告した。