著者
兼清 健志 井出 千束 中野 法彦 鈴木 義久
出版者
藍野大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

脊髄損傷モデルラットを用いて、骨髄間質細胞の培養上清の投与によって神経が再生する際、神経細胞に対する直接な効果だけでなく、シュワン細胞の浸潤や損傷部周辺のアストロサイトが活性化することを明らかにした。培養アストロサイトを用いて in vitro での骨髄間質細胞の影響を調べたところ、骨髄間質細胞の培養上清の添加によってアストロサイトによる炎症性ケモカインの産生が抑えられていた。また、脳脊髄液を産生し中枢神経系の維持に重要であるグリア細胞の一つである脈絡叢上皮細胞も骨髄間質細胞によって一部の栄養因子の産生が増加した。さらに、この脈絡叢上皮細胞の培養上清を脳脊髄液経由で投与し、神経再生を確認した。
著者
片岡 和哉 井出 千束 鈴木 義久
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

アルギン酸スポンジを用いた脊髄再生の研究を引き続き行った。生後4週令のWistar系の脊髄を2箇所切断し約2mmのギャップを作成し、そこにアルギン酸スポンジを移植し脊髄内軸索の再生を観察した。なにも移植しないもの、コラーゲンスポンジを移植したものをコントロールとし比較した。術後4週、8週のトルイジンブルー染色、免疫染色、電子顕微鏡等により評価した。アルギン酸スポンジを移植したものは、術後4週より、脊髄断端より伸長したアストロサイトの突起を伴って多数の脊髄内軸索の再生が見られ、アルギン酸内をシュワン細胞に取り囲まれ長く伸長していた。一方、なにも移植しないものでは、脊髄断端よりの軸索の伸長はほとんど見られなかった。コラーゲンスポンジを移植したものでは、脊髄断端よりフラーゲン内への軸索の伸長は一部見られたものの数は少なかった。また、コラーゲンtype IV、コンドロイチン硫酸の染色では、なにも移植しなかったものではグリオーシスと思われる厚い壁の様なものができていたが、アルギン酸を移植したものでは見られなかった。電子顕微鏡による観察では、アルギン酸を移植した群では伸長する軸索、アストロサイトの突起、シュワン細胞が接している所見、一本の軸索が近位ではオリゴデンドロサイトによる髄鞘をもち、遠位ではシュワン細胞による髄鞘を持っている所見も得られた。一方なにも移植しない群では脊髄断端に厚いアストロサイトの創が形成され、その表面は基底膜で覆われていた。以上のことより、アルギン酸が脊髄内軸索の再生に良好な環境を提供していることが証明された。この論文は2004年4月刊行の「Tissue Engineering」誌に掲載される予定である。