著者
高橋 理宇眞 藤澤 隆史 長田 典子 杉尾 武志 井口征士
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.90(2006-MUS-066), pp.105-108, 2006-08-08

「音を聴くと,色が見える」という現象は 色聴と呼ばれており,共感覚の1つである.こうした現象は 感覚モダリティ間の関係を明らかにする上で重要な手がかりとなることが期待される.本研究は 色聴保持者において音楽聴取時に実際に色知覚に関与している脳内領野で活動が生じているかをfMRIを用いて計測した.実験はブロックデザインで行われ 課題刺激は音楽,レストはbeep音の呈示が行われた.分析はSPM99を用いて行われた.色聴保持者固有の賦活領域として紡錘状回および上前頭回が抽出され,紡錘状回において色知覚に関わるV4/V8付近で有意な活動がみられた.このことは,色聴が聴覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆している.また左紡錘状回が右に比べて広く賦活していることより,色聴は左紡錘状回が相対的に重要な役割を担っていると考えられる.
著者
金森 務 片寄 晴弘 志村 哲 井口征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.71, pp.45-48, 1994-08-06
被引用文献数
2

我々は,感性情報処理・ヒューマンコミュニケーションの研究の一貫として,Virtual Performerの開発を行なっている.Virtual Performerとは文字どおり仮想的なPerformer(演技者,演奏者,実行者)の作成を目指したものであり,特にリアルタイム芸術における感性コミュケーションをキーワードに掲げている.Virtual Performerの構成としては外界からの情報の入力処理,入力した情報の解析と応答処理,音響・映像の表現処理の大きく三つの処理群から成り立つ.これらの構成の仕方により様々なタイプの応用が考えられるが,本稿では,計算機音楽作品「竹管の宇宙II」を演奏するために開発したCyber尺八について紹介することにする.We have been developing the Virtual Performer as the study of KANSEI Information Processing and Human Communication. One of the objectives of the Virtual Performer is to study the model of "KANSEI" communication in real-time. The Virtual Performer is composed of the sensor module which acquire the information of the environment, the control module which analyzes the acquired data and plans how to respond to the environment, and performance module which express the response using Audio-visual equipment. This paper focuses on Cyber Shakuhati for "Tikukan no uchu", as the latter usage of the virtual performer.
著者
金森 務 片寄 晴弘 新美 康永 平井 宏 井口征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.139-152, 1995-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
13

本稿ではジャズセッションシステムのための音楽認識処理について述べる。ジャズセッションは、演奏者および聴取者がライブ演奏を楽しむために行われる音楽形態である。メロディー、ハーモニー、リズムなどを通じて、演奏者の意図の交換が行われている。我々はリアルタイムのノンバーバル・コミュニケーションの研究対象として、音楽セッションのモデル化とそのシステム化を行っている。音楽セッションにおける奏者間の伝達要素を機能的に、1)論理的制約:事前の打ち合わせや音楽理論によって全体の進行を方向づけるメッセージ、2)感性惰報:奏者の心理的な状態を示すメッセージでそれ自体は強い制約ではなく、応答については相手の性格に大きく委ねられるもの、に分類し、これらのメッセージの抽出機構と反応機構に墓づいたセッションシステムの構築を行っている。音楽近知覚という問題を一般性を特っていると思われる部分と個性による部分に分けることで、セッションシステムのユーザ・インタフェースという観点から扱いやすい形に整理した。また、音楽の情動を扱うための枠組みとして、音楽の期待感を扱う認識、分かった時点での喜ぴを扱う認識、マクロ的に情動を扱う認識の機構について述べる。システムはリアルタイムで動いており、音楽聴取部では筆者の一人である音楽家の実践的経験則をインプリメントしている。ここでは、昔楽聴取部についての実験結果を示した。