- 著者
-
井堀 宣子
- 出版者
- お茶の水女子大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2004
テレビゲームに関する研究のメタ分析を2種類実施した.メタ分析は文献のレビューとは異なり,領域すべての研究を量的に統合することが可能な手法である.まず,テレビゲームと認知能力との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが,空間認知,情報処理能力,創造性,論理性,学校成績,、言語能力などの認知能力にどのような影響をもたらしたかについて検討した研究を収集し,知見を統合することを目的とした.オンラインデータベース「PsycINFO」,「Science Direct」,、「ERIC」等を利用し,テレビゲーム(コンピュータゲームを含む)と認知能力に関するキーワードで文献を検索し,テレビゲームの使用を独立変数とし,認知能力の測定を従属変数とした研究を抽出した.このうち,メタ分析に必要な統計値が報告されていなかったり,理論的にメタ分析に使用できない統計値しか報告されていない研究は除外した.その結果,本研究で対象とした研究は,空間認知に関するものが研究,情報処理能力に関するものが2研究,学校成績に関するものが7研究,言語能力に関するものが4研究,数学的能力に関するものが3研究であった.各研究で報告されていた統計値を,メタ分析で扱う数値に変換し,効果サイズZ_<FISHER>を求めた結果,重み付けを行わなかった場合は,いずれの認知能力の効果サイズも有意ではなかったが,重み付けを行った場合では,空間認知,情報処理能力,言語能力については,正の有意な効果サイズを示し,学校成績,数学的能力については負の有意な効果サイズを示した.これらの結果から,テレビゲームの使用は空間認知,情報処理能力,言語能力については,それらの能力を向上させるのに役立つ可能性が示され,逆に,学校成績や数学的能力については,それらの能力を低下させてしまう可能性が示された.次に,テレビゲームと攻撃性との関係を検討した研究についてのメタ分析についてだが,ここでは,テレビゲームが攻撃性などにどのような影響をもたらしたか検討した日本における研究のみを収集し,実施している.攻撃性の他に,攻撃行動,向社会的行動,社会不適応,共感性などの変数に関する従属変数を扱った研究についても同時に検討している.こちらのメタ分析については現在も進行中である.