著者
佐治 英郎 荒野 泰 前田 稔 井戸 達雄 大桃 善朗 中山 守雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

細胞殺傷性の強い高エネルギーβ線を放出する放射性核種を結合した化合物を体内に投与して癌細胞周辺に送達・集積させることにより、その放射線が透過する範曲内で癌細胞を直接死亡させることが可能となる。この『内用放射線治療薬剤』の開発するために、本研究では、有効な放射性核種の選択とその製造方法、充分な治療効果を得られる放射能のデリバリーシステムの構築・担体分子への旅射性核種の効率的結合法、放射線量に関する放射線生物学的評価等について総合的に調査し、以下の結果を得た。1.癌の治療に十分な飛程、線量などを与える放射性核種の選択を行い、放射性ヨウ素-131、レニウム-186、 188、ルテチウム-177、銅-64等のβ線放出核種が有効であることを認めた。2.1での選択された旅射性核種の製造のための核反応の選択、製造方法、他施設への運搬、院内サイクロトロンによる製造系について、時間、方法を含めてシュミレーション的に調査し、これが可能であることを見出した。3.放射性同位元素を用いた癌の治療には、癌細胞自身あるいはその周辺に多量の放射能を集積させること、および非標的組織からの速やかな放射能の消失を達成するために、放射能のキャリア分子を探索し、抗体、リポソーム、核酸、腫瘍部位に発現受する容体結合物質などにその可能性があることを認めた。4.「がんの内用放射線治療薬剤の開発に関するシンポジウム」を開催し、上記の結果を報告すると共に、それに関して、他の薬学、臨床放射線治療分野、核医学診断分野などの医学、核反応と放射性核種の製造分野の研究者と癌の内用放射線治療薬の有効性について討議した。この結果は今後の内用放射線治療薬の開発研究に有益な情報となった。
著者
伊藤 正敏 田代 学 藤本 敏彦 井戸 達雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

中等度強度の運動によって脳内ドーパミン分泌が生じているか否かを明らかにする目的で[^<11>C】Raclopride-PETを用いて脳内ドーパミンD2濃度の定量を行った。8人の健康な男性(年齢は21.4±2.0歳)の協力を得て、一回は安静状態で、もう一回はエルゴメータ運動を行いながらPET撮影を行った.エルゴメータ運動は強度VO2Max35〜60%で50分間行い、運動開始後20分で[^<11>C]racloprideを静脈投与した.運動に随伴する頭の位置のずれを最小にするために、Plastic face maskによって強固に頭を固定すると共に、数学的動き補正を行った.ソフトウエアは、Welcome Institute開発のSPM5を使用した.次に、この加算画像を用いて脳標準画像に対して形態的標準化を行った.この画像に対して関心領域(ROI)を左右の尾状核、被殻および小脳にとって[^<11>C]raclopride集積の時間変化曲線(TAC)を得、小脳を参照領域として、D_2受容体結合能(BP)、をSimplified Reference Tissue Model(SRTM)、Logan NonInvasive Method(Logan)、Ichise Multilinear Reference Tissue Model(MRTM2)を使って計算した.解析ソフトはPMODを使用した.解析の結果、左右の尾状核および被殻における[^<11>C]racloprideのドーパミンD_2受容体への結合が運動中、一様に減少し手いるのが判明した.その減少の程度は-12.9〜17.0%(P<0.01)であった.運動に際しての[^<11>C]racloprideのD_2受容体への結合の減少は、脳内ドーパミンが分泌されたことを強く示唆するもので、運動に際しての爽快感などの情動感覚と関係すると考えられる。