著者
石塚 航 今 博計 黒丸 亮 津田 高明
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.129, 2018

<p>2016年、5つもの台風が北海道に接近・上陸して甚大な被害をもたらした。北海道への台風上陸は9年ぶりの記録だが、3つの台風が上陸したのは気象庁の統計開始以来初の記録で、稀な気象イベントだったことがうかがえる。このうち大型の台風10号は、上陸こそしなかったものの8月末に道南地域を通過したため、この地域の森林に大規模な風倒害が発生した。トドマツ産地試験の1つも風倒害を受けたため、低頻度の攪乱への応答、とくに地域変異の有無を知る貴重な機会と捉え、実態を調べた。対象種は北海道の主要造林樹種トドマツで、道内全地域にまたがる53家系の苗を1980年に植栽した産地試験のうち、函館市内にある試験地にて現地調査を行った。過去の定期調査データも用いて解析し、以下の結果を得た;1) 風倒率は成長や生残密度と関係なく形状比と関係し、道北・道東産で風倒率が高いという地域変異もみられた。2) 幹折れ、根返りの割合に地域変異があり、道北と一部の道東産で根返りが多かった。3) 攪乱後の家系成績(成長×生残)は道西南地域産で高い傾向があった。これらは攪乱応答と地域適応性との密接な関連を示唆すると考えられた。</p>
著者
今 博計 渡辺 一郎 八坂 通泰
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.395-400, 2007 (Released:2008-08-27)
参考文献数
31
被引用文献数
7 8

トドマツ人工林を多様な広葉樹を含む針広混交林へと誘導する施業法を検討するため,間伐後8∼11年経過した39年生の間伐林分と28年生の無間伐林分において下層植生を調べた。間伐は3段階の異なる強度の列状間伐(1伐4残,2伐3残,3伐2残)を行った。間伐後の林内の相対光合成有効光量子束密度は,間伐強度が強くなるにしたがって明るくなる傾向があった。高木性・亜高木性広葉樹の種の豊富さと個体数は,無間伐区に比べ間伐区で高かったが,間伐区間では間伐強度が強いほど,個体数が少なくなる傾向があった。低木類と草本類の最大植生高と植被率は,間伐強度が強くなるにしたがい増加していた。2伐3残区と3伐2残区では,ウド,アキタブキなどの大型草本の回復が著しく,多くの高木性・亜高木性広葉樹はこれらの草本類により覆われていた。しかし,2伐3残区と3伐2残区では,大型草本の被圧を抜け出した樹高1 m以上の広葉樹が11種あり,その個体数は1 ha当たり2,500∼3,750本存在していたことから,十分な数の更新木が確保できたと考えられた。したがって,間伐によって,トドマツ人工林を多様な広葉樹を含む針広混交林へと誘導することが可能であり,間伐には誘導伐の効果を併せもつことが示された。
著者
佐藤 創 鳥田 宏行 真坂 一彦 今 博計 澁谷 正人
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.307-312, 2009-10-01
被引用文献数
1 7

2004年台風18号により風倒被害を受けた,北海道美唄市内の防風保安林の風倒要因を解析した。この台風による最大風速は21m/sであった。調査を行った防風林はヨーロッパトウヒ,カラマツ,シラカンバ,ヤチダモ人工林である。防風林に21箇所の方形区を設定し,各個体の胸高直径と「根返り」,「幹折れ」,「無被害」別の被害状況を記録した。また,深さ別の土壌の硬さを簡易貫入試験機により測定した。さらに,樹種別に風倒被害の異なる要因を知るために,幹を側方に引き,根返りを発生させる際の最大抵抗モーメントを測定した。数量化2類による解析の結果,カラマツが最も被害を受けやすく,次いでヨーロッパトウヒ,シラカンバ,ヤチダモの順に風倒被害を受けにくくなった。胸高直径は30cmをピークに被害を受けやすかった。被害の種類については,カラマツとシラカンバは根返りしやすく,ヨーロッパトウヒは幹折れしやすかった。土壌の硬さは被害にあまり影響していなかった。根返り抵抗モーメントはヤチダモ>シラカンバ≒カラマツ≒ヨーロッパトウヒとなり,樹高や葉量の違いとともに,樹種別の風倒被害の違いを引き起こす要因となっていると考えられた。