- 著者
-
今井 理恵
- 出版者
- 日本福祉大学子ども発達学部
- 雑誌
- 日本福祉大学子ども発達学論集 (ISSN:18840140)
- 巻号頁・発行日
- no.8, pp.15-23, 2016-01
中学校期は, 学習内容の高度化, 教科担任制や移動教室などの学習環境の変化, 複数の小学校出身者との出会いと友人関係の複雑化, 部活動での人間関係の構築, 進路選択などを含んで, 生活場面と学習場面において大きな変化が伴う. さらに, 思春期とも重なり, 身体的に成長していく一方で精神的には未熟な部分もあるため, 中学校での生活と学習に不安や葛藤を抱えて苦しんでいる子どもは少なくない.2008 年学習指導要領改訂の力点の一つである「言語活動の充実化」が教科での学習において重視される一方で, 体験活動の充実を図ること, すなわち, 特別活動の役割がこれまでにも増して重要な位置に置かれていることを鑑みても, 中学生の自立を支える教育活動として特別活動の果たす役割は大きい.そこで本論では, 今日の中学生の人間関係をめぐる問題と自立観について指摘し, 特別活動の目標と特質について整理する. そのうえで, 中学校特別活動実践を基に,中学生の自立を支える特別活動に求められる視点として,第一は, 特別活動を通して困難さを抱える他者に共感し,応答する関係をつくる, 第二は, 学校行事を通して, 子どもの今を問い直し, もう一つの生きるに値する世界をつくりだす, 第三は, 学級や学校での生活づくりを問い直す, 以上3 点を提示した. その際, 思春期である中学校期の自立に課題を抱えることの多い発達障害児を中心に検討した.