著者
山口 富一
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.36-42, 2005-03-14

言語聴覚士 (ST) の分野である聴覚障害 (児) 者に対することばの指導やコミュニケーション方法獲得に対する取り組みは古くから行われてきている。国内外の取り組みの歴史と専門職としての言語聴覚士誕生の経緯と、日本における言語聴覚士の国家資格制度が遅れたいきさつを年代を追って、関係諸団体の主張と対立・意見調整の過程を振り返る。言語聴覚士の活躍する多様な職場と多様な養成機関の並存という現状を踏まえての養成が必要と考える。
著者
村上 信 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.43-50, 2007

2005(平成17)年6月に改正され, 2006(平成18)年4月より施行された介護保険法では「地域」を重視し,「地域包括ケア」の考え方が基本的な方向性として示されている。こうした「地域包括ケア」システムを実効あるものにするためには,その一端を担うケアマネジャーのケアマネジメント力の能力の向上が大いに寄与するものと考えられる。そこで本稿においては,筆者がスーパーバイザーを担当した支援困難事例に対する事例検討会で取り上げられた事例の分析を通して,主任ケアマネジャーが直面している高齢者ケアマネジメントの現状について考察を行い,今後の具体的な課題に関して検討を行なうことを目的としたものである。その結果,「潜在化しているニーズ」をもつ利用者を中心に,利用者とケアマネジャーが共通のニーズを合意できないままに,「利用者との相互作用」に困難を来しているところにあると考えられた。今後はこうした要因の解決に対して有効となる支援プログラムの構築が求められるとともに,スーパービジョン体制をより展開していくためのスーパーバイザーの育成についても検討していく必要があることが考えられる。
著者
岩森 大
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.71-82, 2002-12

本研究では,ソーセージの品質と消費者嗜好の関係を総合的に捕らえ,評価方法を確立し,商品開発のあるべき方向性について示唆を与えることを目的とした。まず,市販のソーセージ22種について,水分,粗蛋白,粗脂肪,全糖量,遊離アミノ酸,灰分,塩分の定量分析を行った。また,テンシプレッサーによる破断強度の測定を行なった。官能評価では,学生パネル約200名と専門家パネル6∿12名の2種類のパネルを構成した。試料は,一般成分と物性を測定した試料と同じものを用いた。評価項目は,香りについて,風味について,テクスチャーについて,味について,さらに高級感,飽きやすさなどに関する38項目とした。客観的にソーセージの品質特性を探るために,質問項目の中から成分値と対応しているものを選択し,その関係を調べた。さらに,学生164名を対象に,一般的な食嗜好傾向と食行動に関する意識調査をおこなった。そして,相互の関連性について解析した。
著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.60-63, 2007

近年,われわれの生活の質や幸福感に影響を与える要因として社会的な要因に着目した観点の必要性が提唱されているなかで,地域の社会的要因であるソーシャル・キャピタルに関してその関心が高まっている。そこで本論においては,一般的信頼をソーシャル・キャピタルの代理変数として捉え,先行研究において用いられている一般的信頼に関する位置づけに関して網羅的な検討を行なうことを目的とした。その結果,一般的信頼を用いることの利点として,多様な手法によりある種のソーシャル・キャピタルの把握が可能になるとともに,地域間比較や経年的変化をも加味した研究デザインに基づく検証をも可能になることが考えられた。
著者
高林 知也
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は正常足と扁平足で足部内の協調性パターンと力学的負荷を検証することを目的とした.はじめに,正常足と扁平足の足部内の違いに着目し,扁平足はランニング中に正常足と比較して過剰に後足部と中足部,前足部が動くことを明らかにした.さらに,足部内の力学的負荷の性差も検証し,ショパール関節モーメントとリスフラン関節モーメントに性差は認められないことを明らかにした.
著者
児玉 直樹 竹内 裕之 山口 弘次郎 小杉 尚子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、mild ADとMCIを対象にデータベースに蓄積されたMRIとADAS-Jcogを使用し、mild ADとMCIの早期診断について検討した。対象はmild AD192名とMCI138名の計330名である。本研究の結果、VOI内萎縮度、全脳萎縮領域の割合、VOI内萎縮領域の割合、萎縮比の全てにおいて有意な差が認められた。また、ADAS-Jcogの下位項目のうち10項目で有意な差が認められた。さらに、判別分析の結果、全脳萎縮領域の割合、見当識、単語再生、再生能力、物品呼称で判別率80.9%を得た。よって、この5項目はmild ADとMCIの診断に有用な指標であった。
著者
江玉 睦明
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は,①日本人遺体を用いて,アキレス腱の解剖学的構造を分析し腓腹筋内側頭の効果的・選択的ストレッチング方法を考案することと,②健常成人を対象に,考案した方法が妥当であるかを,超音波画像診断装置を用いて検討することを目的とした.(実験①)日本人遺体16体25側を対象に検討し,膝関節伸展・足関節背屈に,足関節内反を加える肢位を考案した.(実験②)対象は健常成人男性8名に3つの肢位で検討した.その結果,解剖学的,運動学的検証により,膝関節伸展・足関節背屈に足関節内反を加えた肢位が,内側頭の効果的・選択的ストレッチングとして有効であることが明らかにできた.
著者
峯島 道夫 茅野 潤一郎 大湊 佳宏 今井 理恵
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、日本人学習者が不得手であると言われる批判的思考力(クリティカルシンキング)を伸ばすための英語読解教材と学習形態を開発することを目的とした。英語読解教材としては、Steve Jobsのスタンフォード大学における卒業式でのスピーチスクリプトを題材とし、学習者の批判的思考力を伸ばすことをねらった発問やタスクを考案した。授業形態については、協同学習の一技法であるLTD(話し合い学習法)の手法を援用し、発問やタスクに対する学習者の回答のピアとの共有を活用してテキストの理解の深化と自己の世界観の拡充を目指した。
著者
濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.33-37, 2007

健康分野の研究を概観した場合には,従来,着目されてきた個人レベルの特性に加えて,近年,地域レベルの社会的要因がわれわれの健康に及ぼす影響に対してその認識,再認識がなされつつある。そうしたなかで,地域レベルの社会的要因の一つとしてSocial Capital (ソーシャル・キャピタル)に対してその関心が高まっており,地域レベルと個人レベルの要因を加味した分析手法の必要性が指摘されてきた。そこで,本研究においては,主として教育学,人口統計学,社会学などの分野において検討がなされてきた統計手法であるマルチレベル分析に関して,ソーシャル・キャピタル研究における意義とその適用に関して明らかにした。
著者
田島 崇博 牧田 光代
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.92-95, 2006-12-30

急速な高齢化が進む我が国では,社会保障制度の見直しにより,高齢者ケアの重点は施設中心から在宅へと移行してきている。施設と在宅の中間的施設である介護老人保健施設(以下,老健施設)は急激な増加を続け,理学療法士(Physical Therapist : 以下,PT)が活躍する場の一つとして注目される。そこで,総合ゼミへの参加を通して老健施設におけるPTの役割を調べた。その結果,(1)身体機能の把握(2)家屋状況の適応(3)他職種との連携(4)チームでの統一した目標設定とアプローチ(5)社会資源の活用の5項目が挙げられた。複合的なニーズをもつ対象者に対し,PTも幅広いアプローチが必要である。
著者
小藪 明生 濱野 強 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.48-55, 2006-12-30
被引用文献数
1

近年、コミュニティの再生やさまざまな社会問題克服のため、社会に対する市民的・積極的関与者を育成することが大きな目標とされ、その基盤としてソーシャル・キャピタルという概念が注目を集めている。本論においてはソーシャル・キャピタルの構成要素である一般的信頼に焦点をあて、二次データを用いて一般的信頼への規定要因の検討をおこなった。結果として高信頼者の特徴として(1)収入・学歴が高いこと(2)読書冊数が多く、テレビ視聴時間が短いこと(3)友人関係に満足していること(4)異質な他者に対して寛容であること(5)生活を支える組織に対して信頼を持っていることという五つの特徴が見出された。
著者
南 銀祐 金 恵敬
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-10, 2005-12-22

先進諸国においては、音楽治療活動が集中力や記憶力などにとどまらず、自尊心や責任感の向上及び情緒育成に有効であることが明らかにされつつある。しかしながら、その実証的研究は非常に限られており、それゆえ音楽治療の普及が妨げられている現状にある。そこで、本研究においては、男子中学生及び保護者を対象として、音楽治療活動に関する認識、すなわち音楽治療活動に関する理解度や効果への期待、生徒の情緒不安要因への責任及び解決方法に関して調査を行ったので報告する。
著者
米林 喜男 濱野 強 藤澤 由和 佐々木 正道
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

現在、わが国においては多種・多様な調査が実施されており、それらに関しては非常に精度の高い、有用なデータが多く含まれている。欧米諸国においては、公的機関により実施された調査データはもちろんのこと、公的な助成により得られた調査データに関しては、一定の期間が経過した後には個人が特定されない形での公開が一般的に行われている現状にある。そこで、本研究においては、保健医療分野における調査データの公開制度に関してその具体的な課題抽出と、それらを可能とするための諸要件より検討を行うことを目的としたものであった。具体的には、前年度までの研究成果であるソーシャル・キャピタル研究におけるデータアーカイブの活用実態をもとに、わが国における適応可能性に関して検討した。すなわち、データアーカイブにおける基本的要件を整理し、わが国における背景との適合性を検討することにより、保健医療分野におけるデータアーカイブの可能性を具体的に示したものである。さらにデータアーカイブは、データの公開に際して個人の情報などプライバシー、および情報のセキュリティなどを十分に検討する必要があるが、この点に関しては法律的な観点、および情報技術的観点からそれぞれの専門家らとの意見交換を行ない、オープン・リソースを展開していくための通信技術と個人情報保護との関連性などに関して専門的視点より明らかにした。
著者
相場 恵美子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.111-118, 2002-12

脳損傷により,失読失書,純粋失読,純粋失書といった読み書きの障害が生ずることが知られている。これらの障害に関するこれまでの神経心理学的知見を概観し,読字と書字のそれぞれにおける特徴を述べた。漢字と仮名という2種類の文字体系を持つ日本語においては,脳損傷による読み書き障害に欧米語圏とは異なる特徴が見られる。これらを解釈する上で有用と思われる,漢字と仮名の処理様式の解離を示唆する知見を提示した。漢字の処理に関しては左右半球および左半球内での二重処理が示唆されている。また,近年提唱されている読みに関する認知心理学的モデル(二重処理モデル,トライアングルモデル)を紹介し,表層性失読/深層性失読といった神経心理学的知見との整合性について述べた。さらに,書字に関するモデルを紹介し,書字遂行時の心的過程について,文字形態表象の関与を中心に述べた。最後に,書字過程の研究における今後の課題を述べた。
著者
田中 秀和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.38-42, 2007

今日の日本では,若年労働は不安定化し,格差の拡大が叫ばれている^<註1)>。また,格差社会の不利益を被っているフリーター・ニートについては,その実像がはっきりしない形で世間に伝わっているのが現状である。その原因はフリーター・ニートの問題は本人の自己責任で済まされる問題ではなく,公共政策が不可欠であるのにも関わらず,そのような取組みは不十分であることに起因している。本稿では,フリーター・ニートが個人の自己貴任のみに属する問題ではないことを述べ,社会福祉士が今日の格差社会の中でどのような役割を果たしていくべきであるのかについて検討した。検討の結果,若者再チャレンジ金の創設の必要性と,社会福祉士が企業を訪問し,企業が若年者の雇用問題についてより詳しく認識できるように若年者の声を代弁すべきであるという2つの提案を行った。
著者
伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 本間 沙織 川上 未央 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-35, 2006-12-30

牧草(2品種)、枝豆(3品種)、人参(1品種)を1/20希釈海洋深層水、1mM水溶液、脱塩海洋深層水を与えて、プランター又は野外で栽培して、牧草については葉、枝豆については種子、人参については根の亜鉛含量を測定した。対照は、水道水で栽培したものである。総ての実験区で対照区より乾燥重量あたりの亜鉛含量が増加し、外見・味や食感に変化は無しに、食品の栄養価を高めた。佐渡海洋深層水の農業への利用の可能性を示し、亜鉛含量が低い我国土壌の改良とそこから生産される作物が健康に貢献する可能性を示した。
著者
佐藤 央庸 濱野 強 片見 眞由美 高野 千代 大川 優子 藤澤 由和
出版者
新潟医療福祉大学
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.51-56, 2007
被引用文献数
1

茨城県大洋村(現,茨城県鉾田市)では,精神障害者(以下,当事者)のエンパワーメントの向上を目的として,当事者と住民の参画による普及啓発イベントの開催を試みた。 13名の当事者が実行委員となり,普及啓発イベントの企画とその運営の中心を担い,3ケ月間の準備を経て開催された。そこで,本研究においてはこうした一連の活動が当事者のエンパワーメントに及ぼす影響に関して検討を行なった。その結果,参画後は参画前に比べて「自尊/自己効力感」,「楽天/将来へのコントロール」の2項目について,スコアの改善が示された。以上の結果から,今回の試みが当事者のエンパワーメント向上に有益な影響を及ぼしたことが推察され,その要因として当事者への適切な役割分担と主体性の尊重,当事者に対する周囲の一貫した支持と肯定的態度などが考えられた。