著者
寺沢 捷年 松田 治己 今田屋 章 土佐 寛順 三潴 忠道 鳥居塚 和生 本間 精一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.131-136, 1984-10-20 (Released:2010-09-28)
参考文献数
5
被引用文献数
4 4

慢性関節リウマチと全身性進行性硬化症の合併症例に対し, 自家製の桂枝茯苓丸を投与したところ, レイノー現象と手指屈曲制限が著しく改善した。この効果が桂枝茯苓丸によるものであることを急性投与実験により明らかにした。この効果は同一生薬を用いた水煎剤では得られず, 丸と丸料との相違を示唆する所見である。今後は剤型の相違による適応病態の差異について慎重に検討すべきものと考える。
著者
鳥居塚 和生 平井 康昭 堀 由美子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

硫酸亜鉛(5%) 20μL点鼻による嗅覚障害モデルマウスを作成し,嗅球中モノアミン含量への影響について電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー法により検討した.その結果,対照群に対して,硫酸亜鉛を点鼻投与した群のドーパミン(DA)組織重量は低下することがわかった.この嗅覚障害モデルマウスに対して,漢方処方の加味逍遥散(KSS:柴胡,芍薬,朮,茯苓,当帰,甘草,牡丹皮,山梔子,薄荷,生姜)を経口投与した群では, DA組織重量の低下が抑制された.構成生薬10種より一味の生薬を除いた処方を作成し生薬の寄与を検討したところ,加味逍遥散の脳内モノアミン含量に対する障害改善効果は,構成生薬が総て揃った処方としたときが最も高く,一味を抜くことで弱まることを確認した.また甘草,芍薬,生姜,朮が効果に大きく寄与することが示された.また感覚器入力に対する行動薬理学的検討を実施した.その結果,嗅覚障害モデル動物が記憶学習障害の評価モデルの一つとなりことを明らかにした.またこのモデルにおける嗅球におけるドーパミンレベルの著しい低下と,受動的回避課題の大幅な減衰を引き起こすことに関与する物質を明らかにする目的で,嗅球における神経伝達物質の機能を持つとされるL-カルノシン(β-alanyl-L-histidine)の関与について検討した. L-カルノシンの腹腔内投与により用量依存的にマウスの常同行動を惹起した.またこれらはドーパミン受容体拮抗剤のクロロプロマジン,ハロペリドールおよびドーパミン合成酵素阻害剤で抑制された.中枢におけるドーパミン神経系における制御にL-カルノシンが寄与することを示した.またドーパミンの再取り込み阻害剤ノミフェンシンの投与で,記憶学習障害が顕著な改善を示すことを明らかにした.
著者
荒井 啓行 鈴木 朋子 佐々木 英忠 花輪 壽彦 鳥居塚 和生 山田 陽城
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.212-215, 2000-03-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
10
被引用文献数
5 10

Choline acetyltransferase 活性増強作用と神経栄養因子様作用を有する漢方処方の加味温胆湯 (KUT) を用いて, Alzheimer 病 (AD) への治療介入を試みた. 認知機能は, Folstein らの Mini-Mental State Examination (MMSE) スコアで評価し, その年変化を指標とした. Baseline MMSEは, KUT群 (20例) で18.6±6.8, コントロール群 (32例) で20.8±5.6であった. KUTは北里研究所東洋医学研究所薬局処方集第3版に基づき, 煎出し, 平均約1年間服用した. 悪心, 嘔吐, 下痢などのコリン作動性神経刺激症状は認められなかった. コントロール群では, MMSE年変化は4.1ポイントの悪化であったのに対して, KUT群では1.4ポイントの悪化であった (p=0.04). KUTの効果は漢方医学的ないわゆる証やApoE遺伝子型に依存しなかった. KUT投与前後で脳脊髄液tau値やAβ1-42値に有意な変動は見られなかった. KUTは, 少なくとも初期から中期にかけてのADにおいて進行抑制効果を有するものと考えられた.
著者
堀 由美子 村社 知美 福村 基徳 鳥居塚 和生 伊田 喜光
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-11, 2008 (Released:2009-02-28)
参考文献数
21
被引用文献数
7 16

水腫, 脚気, 解毒の改善に用いられるアズキ (生薬名: 赤小豆, セキショウズ) 煮汁の成分を明らかにする目的でアズキ熱水抽出物の成分研究を行った。その結果, フラボノイドならびにその配糖体13種を単離し, 構造を明らかにした。次いでアズキ熱水抽出物およびこれから得られたフラボノイド誘導体についてDPPH法によるラジカル消去活性を測定した。その結果, いずれも代表的な抗酸化物質であるBHAに匹敵する強い抗酸化作用を示した。