著者
今野 裕昭
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-13, 2020-03

海外ライフスタイル移民は、ミカエラ・ベンソンが「仕事や政治的避難のような伝統的に挙げられてきた理由のためではなく、主に生活の質として広く語られる理由に駆りたてられた移住のグループ」と定義しているように、より良い生活を求めての移住という点に特色があると言われる。本稿では、日本人のライフスタイル移民の研究が比較的多いオーストラリア移民の事例を中心にこの移民の移住動機を再検討し、生活の質として語られる理由の内実を確かめる。先行研究から、出自国社会の閉塞感、上下の人間関係、ジェンダー規範や都会のストレスからの脱出と、ゆとりのある生活、安い住宅費と生活費、健康に良い気候や景観、子育てに良い環境への希求が出てきた。さらに、1980年代90年代に新たに登場したライフスタイル移民と、戦前からの従前の経済移民とを対比し、前者の移住の性格は自発的な選べる移動に特徴がある点を確認した。その上で、グローバル化現代のライフスタイル移民が、移住先の海外日本人社会の中でどのような位置に置かれているかを検討し、移民の性格の点で見るとこの人たちが今やゆらぎの中にあることを明らかにした。この半世紀の間にライフスタイル移民のタイプは複雑に多様化し、階層分化の中で格差が大きくなり、孤立する者が生じ、重大なことに、選びとる移動で来たはずの人が、グローバル化の進展の中で今や選べない移動を強いられている事態が表面化してきている。
著者
今野 裕昭
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

震災後の生活再建過程に関する真野地区の被災者への面接聞き取り、アンケート調査の再分析、避難所避難者の属性分析、および、まちづくり推進会(復興まちづくり事務所)による地区復興の推移を総合した結果、次のような知見を得た。(1)震災そのものの被害に、高齢者、障害者、母子家庭、低所得者、貸貸家屋居住者など社会的弱者への集中という階層性と、彼らが多く滞留するインナーシティヘの集中という地域差別性とが確かめられたが、その後の生活再建の過程はこの階層間の格差をさらに増大するものであった。(2)[住の再建]避難所→仮設住宅→災害復興住宅という、行政が用意した復興プランにのり比較的自立的に再建できたものおよびぎりぎりのところで再建できたものと、最初から貸家に留まりこのルートにのれなかったものとの間の格差が拡大してきている。政策的な配慮から漏れた中高年層も、社会的弱者の立場に立たされてきた。(3)[職の再建]仮設工場、災害復興工場のメニューを行政は用意しているが、こうしたルートにのれるのは大きい企業者のみであり、中小零細自営業主は、家族・親戚、得意先の助力で再建しても、その後の不況もあって、運転資金にすら困る状態が続いている。(4)[社会的環境]被災者を被災した場所にという方針が最初からとられなかったために、従前のコミュニティは消失し、災害復興住宅でもコミュニテイが形成されていない。(5)行政が用意した生活再建のルートにのれない人にとって、行政と住民の間を仲介する中間集団の支援が必要であることが明らかになった。