著者
伊藤 武治 江崎 功二郎 小谷 二郎 酒井 敦
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.177-183, 2020 (Released:2021-09-15)
参考文献数
17

塩素酸系除草剤とグリホサート系除草剤を竹林に施用し,土壌や渓流水の残留量や残留期間を調査した.あわせて,竹林内および竹林伐採後に多く見られる植物種の種子発芽への影響,および除草剤使用後の下層植生への影響を調査した.塩素酸系除草剤は,散布後1ヶ月でほとんど分解された.グリホサート系除草剤では,落葉・土壌・細根からわずかな残留成分が検出された.一方,付近の渓流水からは検出されず,処理区外への流出の可能性は極めて低いと考えられた.種子発芽試験においては,塩素酸系除草剤処理区でカラスザンショウの発芽率が有意に低かった.グリホサート系除草剤を施用した試験では,下層植生の種数が約2倍に増え,植被率も急増し,先駆性樹種や草本が多く見られるようになった.竹林の皆伐後も同様な傾向が示されていることから,タケが枯れることにより皆伐と似たような効果が現れたと考えられた.これらのことから,竹林駆除に使用される除草剤の環境への影響は小さいものと考えられた.
著者
宮本 和樹 奥田 史郎 稲垣 善之 小谷 英司 野口 麻穂子 伊藤 武治
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-26, 2009
参考文献数
32
被引用文献数
1

四国のヒノキ人工林において本数率30〜50%の間伐を行い,5年経過後の残存木の成長と葉面積指数(LAI)を林分間で比較した。プラントキャノピーアナライザ(LAI-2000,Li-Cor社)を用いて測定した2007年における50%区のLAIは30%区と同程度の値を示し,強度間伐区において葉量が速やかに回復していることが示唆された。5年間の胸高断面積合計(BA)の増加量についても30〜50%区間で顕著な差は見られなかった。個体レベルの成長についてみると,間伐により単位BAあたりおよび個体あたりのLAIが大きくなるほど幹胸高直径の成長速度(中央値)は増加した。本調査地においては,これまでのところ強度な間伐による残存木への著しい負の影響は現れておらず,間伐率が高くても胸高断面積合計ベースの林分成長には従来の間伐と比べて差がほとんどないことが示された。またその要因として,個体あたりの葉量の増加が残存木の個体成長を促進していることが示唆された。