著者
今城 香代子 江崎 功二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.312-314, 2013-12-01 (Released:2014-03-03)
参考文献数
19

我々は, 樹幹表面に分布するカシノナガキクイムシ (以下, カシナガ) の穿入孔を濡らしたタオルでカバーするだけで, カシナガの成虫を捕獲できることを明らかにした。2012年10∼12月の間, カシナガの穿入木3本の地際部にタオルを設置したところ, 日当り平均13.3頭/m2の成虫が継続して捕獲された。カシナガの坑道が穿入孔からタオル内部に延長され, タオルの回収によってそこに滞在する成虫が捕獲された。成虫の性比は著しくオスに偏り, 12月に捕獲されたオス成虫のうち, 親は24.0%であった。冬前にオス親を除去することで繁殖成功度を下げる効果が期待される。
著者
伊藤 武治 江崎 功二郎 小谷 二郎 酒井 敦
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.177-183, 2020 (Released:2021-09-15)
参考文献数
17

塩素酸系除草剤とグリホサート系除草剤を竹林に施用し,土壌や渓流水の残留量や残留期間を調査した.あわせて,竹林内および竹林伐採後に多く見られる植物種の種子発芽への影響,および除草剤使用後の下層植生への影響を調査した.塩素酸系除草剤は,散布後1ヶ月でほとんど分解された.グリホサート系除草剤では,落葉・土壌・細根からわずかな残留成分が検出された.一方,付近の渓流水からは検出されず,処理区外への流出の可能性は極めて低いと考えられた.種子発芽試験においては,塩素酸系除草剤処理区でカラスザンショウの発芽率が有意に低かった.グリホサート系除草剤を施用した試験では,下層植生の種数が約2倍に増え,植被率も急増し,先駆性樹種や草本が多く見られるようになった.竹林の皆伐後も同様な傾向が示されていることから,タケが枯れることにより皆伐と似たような効果が現れたと考えられた.これらのことから,竹林駆除に使用される除草剤の環境への影響は小さいものと考えられた.
著者
小谷 二郎 江崎 功二郎
出版者
石川県林業試験場
巻号頁・発行日
no.42, pp.10-14, 2010 (Released:2011-07-13)

冷温帯のミズナラを主とする二次林で、集団枯損被害が上木の残存状況と林内の稚樹の生育状況に与える影響を調べた。残存木の林相は、ミズナラ優占型、ミズナラ-小高木型、ブナ優占型、小高木型の4つに区分された。区分された林内の稚樹は、ミズナラ優占型とブナ優占型ではブナの密度が高く、ミズナラ-小高木型と小高木型ではミズナラのほかいくつかの高木樹種の密度が高い傾向にあった。ブナ堅果の大豊作年の影響で、大量に実生が発生した林分もみられた。以上のことから、基本的に今後ともミズナラを主とする林分が維持され、中にはブナが優占度を増加させる場合や、一部では多様な樹種構成に変わる場合なども考えられた。
著者
江崎 功二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.58-63, 2011 (Released:2011-06-22)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

無散布木と散布木を均等に配置したコナラ林で2008年およびミズナラ林で2009年に研究を実施した。散布木にフェニトロチオン1.6%乳剤をカシノナガキクイムシ成虫の穿入直後とその約3週間後に, 地上から6mまで樹幹散布した。散布木において1回目散布後に穿入数の増加は認められなかったため, 穿入直後の散布は穿入の継続を断ち切ることを示した。さらに, コナラ林およびミズナラ林の無散布木において1回目散布後に新たに発生した穿入木の本数割合はそれぞれ81.1%および95.7%であったが, 散布木ではそれぞれ2.8%および18.5%に抑えられ, 穿入密度は低くなる傾向があった。このため, MEPの2回散布は成虫の発生期間を通じて, 高い穿入防止効果を維持できることを示した。
著者
江崎 功二郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.391-396, 2008-12-01
被引用文献数
3 4

コナラ林およびミズナラ林においてフェニトロチオン乳剤(以下, MEP)をカシノナガキクイムシ成虫の発生前に1回, 地上から6mまで樹幹散布した。コナラ林の成虫発生密度は, ミズナラ林より5倍以上高かった。コナラ林において, イニシャルアタック防止率は散布後1∼3週間は100%であったが, 散布5週間後には50%に低下した。さらに, イニシャルアタック防止効果を示す未穿入木での♂捕獲数7頭以上は22回出現し, 20回は散布1∼5週間後に集中していた。また, マスアタック防止効果もこの期間示された。ミズナラ林において, イニシャルアタック防止率は散布5∼7週後まで100%であったが, それ以降は約80%に低下した。コナラ林において薬剤散布高までの穿入密度は無処理木より低く, 地上高0.5∼1.5 mの範囲で最も差が大きかった。これらのことより, MEPの樹幹散布はカシノナガキクイムシの穿入防止に有効で, MEPを1回散布すると, 3週間以上にわたり高い穿入防止効果を維持できることが明らかになった。
著者
鎌田 直人 江崎 功二郎 矢田 豊 和田 敬四郎
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

個体群生態学的な研究により、カシノナガキクイムシはイニシアルアタックの際に、衰弱木や感受性の個体を選択的に攻撃するのではなく、無差別に攻撃していた。穿孔数やカシナガの繁殖成功度は、樹木の生死ではなく過去の穿孔の有無によって強く影響されていた。過去にカシナガの穿入を受けていない7本のミズナラを測定対象とし、樹幹北側の地際部と地上高150cmの位置で、各2点ずつの温度測定を行った。その結果、1)150cm部位と地際部の温度差(以下、温度差)は、特に6〜8月の高温時(日最高気温約25℃以上)に大きくなった。2)秋までに被害を受け葉が褐変または萎凋した個体(以下、被害個体)は、1個体を除き、カシナガ穿入前(6月上・中旬)に高温時の温度差が大きかった。3)上記例外の1個体は150cm部位と地際部の温度の平均値(以下、平均温度)については他の個体よりも高めで、最も早くカシナガの穿入を受け、枯死した。樹幹2ヶ所の温度差と平均温度によって、樹体の健全性を評価し、カシノナガキクイムシの穿孔に伴う枯死や萎凋を予測できる可能性がある。