- 著者
-
伊藤 隆史
垣花 泰之
- 出版者
- 一般社団法人 日本集中治療医学会
- 雑誌
- 日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.6, pp.499-504, 2015-11-01 (Released:2015-11-06)
- 参考文献数
- 32
敗血症の際には,血管内血栓形成が進行し,しばしば播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)を合併する。血管内血栓形成は,血流を悪化させ,臓器障害の原因となりうることから有害事象と考えられているが,感染を局所に封じ込めるうえで重要な役割を果たしている可能性が指摘され,“immunothrombosis”という概念で注目されている。しかしながら,感染を局所に封じ込めることができずにimmunothrombosisが全身に拡散した場合,多臓器が障害され,生体防御機構であったはずの血栓形成が宿主にとってむしろ有害なものになってしまう。このように,immunothrombosisが全身に拡散して制御不能に陥った状況が,敗血症性DICの病態基盤であると考えられる。本稿では,immunothrombosisで重要な役割を果たしている好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps, NETs)の放出機序や意義について概説し,NETsから遊離してくると考えられている細胞外ヒストンが敗血症性DICの病態に及ぼす影響について考察する。