- 著者
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伊藤 隆史
川原 幸一
橋口 照人
丸山 征郎
- 出版者
- The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
- 雑誌
- 日本血栓止血学会誌 = The Journal of Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis (ISSN:09157441)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.4, pp.418-421, 2009-08-01
急性炎症とは,生体にとっての非常事態体制である.感染を察知した免疫細胞や,損傷に伴って壊死した細胞は,High mobility group box 1 protein (HMGB1) を放出することによって周囲に非常事態宣言をする.これを受けた周囲の細胞は,炎症,免疫,組織修復のプログラムを立ち上げ,非常事態に対応しようとする.このように,HMGB1は生体防御的役割を担っているが,その一方で,大量に産生されて全身を循環するHMGB1は,全身性炎症反応症候群(SIRS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こし,致死的に働く.このHMGB1の全身化を防ぐ役割を担っていると考えられるのが,抗凝固タンパク質として知られるトロンボモジュリン(TM)である.TMはトロンビンと結合するとともにHMGB1とも結合し,トロンビン-TM複合体がHMGB1を分解して不活化する.TM は凝固反応や炎症反応を多面的に制御していると考えられる.