著者
伴 ひかり
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.45-54, 2003

ヘクシャー=オリーン理論にしたがえば,熟練労働豊富国である先進国と非熟練労働豊富国である発展途上国の間の貿易拡大は,先進国における賃金格差の増大と,発展途上国におけるその縮小をもたらす.近年,東アジア地域においても自由貿易協定の構想が活発化しているが,それらは日本の労働市場にどのような影響を及ぼすだろうか.本稿では応用一般均衡モデルの1 つであるGTAP モデルを用い,日本と中国,NIEs,ASEAN,東アジア,全地域のそれぞれの間で関税を撤廃するという5つのシナリオのシミュレーションを実行した.対東アジアと対全地域のシナリオでは賃金格差は拡大するが,他のシナリオでは確認できない.対中国では若干縮小する傾向さえみられる.賃金の動向には生産や貿易の構造が複雑に影響することが明らかになった.
著者
森 晶寿 藤川 清史 伴 ひかり 堀井 伸浩 TRENCHER GREGORY 馬奈木 俊介 渡邉 隆俊 王 嘉陽 居 乂義 稲澤 泉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

石炭投融資撤退は,気候変動対策を金融面から推進する手段として世界的に推進されている.従来の研究では,その投資行動変容やCO2排出削減への効果は限定的と評価してきた.ところが石炭火力発電を志向するアジアでは,中国の石炭火力発電投融資を増やし,温室効果ガス排出と中国への経済的従属を増やすことが想定される.同時に,ホスト国が適切な政策対応を取れば,こうした悪影響を抑制しつつ持続可能なエネルギーシステムへの転換を図る機会とできる.この中で本研究は,投資国・ホスト国の金融機関・電力関連産業の行動変容,及び付加価値分配の変化を分析し,石炭投融資撤退のアジアの持続可能性への移行への効果を検証する.