著者
森 晶寿 藤川 清史 伴 ひかり 堀井 伸浩 TRENCHER GREGORY 馬奈木 俊介 渡邉 隆俊 王 嘉陽 居 乂義 稲澤 泉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

石炭投融資撤退は,気候変動対策を金融面から推進する手段として世界的に推進されている.従来の研究では,その投資行動変容やCO2排出削減への効果は限定的と評価してきた.ところが石炭火力発電を志向するアジアでは,中国の石炭火力発電投融資を増やし,温室効果ガス排出と中国への経済的従属を増やすことが想定される.同時に,ホスト国が適切な政策対応を取れば,こうした悪影響を抑制しつつ持続可能なエネルギーシステムへの転換を図る機会とできる.この中で本研究は,投資国・ホスト国の金融機関・電力関連産業の行動変容,及び付加価値分配の変化を分析し,石炭投融資撤退のアジアの持続可能性への移行への効果を検証する.
著者
藤川 清史 渡邉 隆俊
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.31-44, 2003-02-28 (Released:2015-06-19)

近年,東アジア地域での自由貿易協定(FTA)を研究する機運が高まっている.そうした状況を背景として,本稿では次の2 つを主な目的としている.1 つは近年注目されているGTAP モデルの概要を紹介することである.自由貿易の経済効果を分析するためには多国間モデルが必要であるが,従来はそうしたモデルの開発には多くの時間と費用をかけねばならなかった.機動的対応のできるモデルがあれば使いたいという,かねてからあった要請に応えるために開発されたものがGTAP モデルである.もう1 つは,このGTAP モデルを用いて,東アジア地域で自由貿易協定が締結された場合を想定して,その経済的効果を予測することである.本稿では関税撤廃の直接効果のみに焦点をあて,FTA 後に予想される生産性上昇効果や資本蓄積促進効果は扱わなかった.そのために,予測される経済効果は大きくはないが,それでも,FTA 締結はグループからもれた域外国の経済厚生を低下させる傾向があること,また,FTA 締結国の数が拡大するほど世界全体の経済厚生も高まることが確認された.