- 著者
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佐々木 交賢
- 出版者
- 創価大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1994
社会学の主たる起源は哲学思想、心理学であり、E,デュルケームの努力によって哲学思想,心理学から独立して独自の学問としての社会学が確立された。しかし社会学の独立後も哲学からの影響あるいは社会学への批判が続いており、最近になって再び顕著になった。哲学においてプラグマティズムの占める地位は必ずしも高いとはいえないが社会学に与えた影響は小さくはなく、アメリカにおいてはプラグマティズム社会学も存在する。逆に社会学の立場からプラグマティズムに対して体系的に批判を加えたのはデュルケームであった。彼はプラグマティズムの非合理主義,社会と個人の関係説,副現象説,真理論,道徳的善の観念,宗教論,認識論,論理的功利主義,思考と行動との関係論,還元主義,多元論的形而上学,カテゴリー論,知識と実践との関係説,知識の構成論等に対して彼独自の社会学的立場から批判を加えている。しかもアメリカのプラグマティストの中でもとりわけW.ジェームズの立場を厳しく批判している。それはジェームズの哲学がフランスで有力な哲学者達,とくにH.ベルグソンに支持され,彼の諸著作の翻訳もなされているからである。当時のフランスの思想界はデュルケームとベルグゾンによって二分されており,デュルケームにとってはベルグゾンの哲学はプラグマティズムに近いものとされたのである。そこでデュルケームはプラグマティズム批判と同時にベルグソン哲学の批判も行なったのである。しかしデュルケームの社会学説とプラグマティズムとの間には相点点とともに共通するいくつかの側面がある。これらの点をさらに明確にするとともにデュルケームのプラグマティズム批判の再検討,「プラグマティズム論」に集約されているデュルケームの社会学説そのものを再検討する必要がある。