著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.24-50, 2020-03-20

本稿では,日本占領期ジャワにおける宣伝班の最初期の活動の1つであった巡回映画が,ジャワ住民に対する「身体の占領」の嚆矢となったことをあとづける.本稿では,このため「ジャワ・バリー宣伝部隊」をとりあげる.本稿では,ジャワにおける映画とラジオの登場による社会変容を「視聴覚の産業化と社会化」と位置づけたあとで,ジャワ宣伝班の特徴と限界,ジャワ・バリー宣伝部隊の結成,巡回映画の概要について論じる. 分析の結果,最初期の宣伝部隊の巡回映画の「成功」が,日本映画の水準や内容にのみ負うものではなく,「視聴覚の産業化と社会化」を享受できた社会層がきわめて限定されていたこと,ジャワ上陸作戦の早期終了という外在的な要因がきわめて大きかったことが明らかになった.また,巡回映画の「成功」が,その後の啓民文化指導所の指導制とジャワ映画工作に影響を与えたことが示唆された.
著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.87-108, 2018-03-20

本論の目的は,日本占領期ジャワにおける隣組制度が,1944年1月のジャワ全土での導入前に,段階的に各地で設置されていたことをあとづけることにある.本論では,日本占領期のジャワで隣組制度がいちはやく導入されたバンドゥン市における既存の隣保制度,隣組の法的位置づけ,設置目的,機能を論じる。 分析の結果,本論で示したバンドゥンをはじめとする各地の隣組は,ジャワ軍政による動員と統制を容易にする機能をはたしていたこと,インドネシアの「伝統」とされ,相互扶助を表象するゴトン・ロヨンを制度化するかたちで導入されたことが明らかになった。
著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1・2, pp.29-56, 2019-03-20

本論では,ザカート(喜捨)を原資とする社会基金であるバイトゥル・マルを事例として,日本占領期ジャワにおけるイスラーム教理の制度化の歴史的背景を考察した.分析の結果,バンドゥン県のイトゥル・マルの導入というイスラーム教義の制度化は,ウィラナタクスマのロイスの構想とエリート官吏としての指導力,困窮者救済を義務とするイスラームの教理,そしてジャワ軍政当局のイスラーム対策の構造的欠陥と住民の動員・統制の必要性―という3つの歴史的条件が重なって行なわれたことが明らかになった.また,1942 年6月という軍政初期に導入されたバンドゥン県のバイトゥル・マルは,その規模や機能は限定的とはいえ,ジャワ軍政における事実上はじめての大衆組織としての性格をもっていたことが指摘された.
著者
西村 洋子
出版者
創価大学社会学会
雑誌
Sociologica (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.p1-21, 1980-03

以上,高知市における単親家族実態調査の結果を報告した。これはあくまで一部項目の素集計,単純集計による分折段階である。調査項目はもっと多く,とくに本稿では生活福祉面を載せきれなかった。またクロス集計分析がまったくなされなかったがそれらは今後ひきつづき充実整備をはかるつもりである。以上の分析を簡単に要約する。(1)単親家庭になった理由では,母子家庭も父子家庭も,配偶者との死別よりも生別の方が多い。ことに高知市では,母子家庭の「離別」が約8割弱,父子家庭では実に9割が相当する。それも中身は,離婚が最大理由で,全
著者
森 幸雄
出版者
創価大学社会学会
雑誌
Sociologica (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.25-45, 2003-03

護国神社は,1939(昭和14)年に内務省によって制定された,東京都を除く一府県一社を原則にする指定護国神社の制度にもとづいている。ただし,伝統的に県内に複数の陸軍聯隊区がある県のなかには,県内1カ所にするのが難しかったところもある。岐阜県が岐阜・大垣・高山の3ヶ所,兵庫県が神戸・姫路,広島県が広島・福山,島根県が松江・浜田のそれぞれ2ヶ所が指定護国神社となった。また,北海道は函館・札幌・旭川の3カ所が指定護国神社となった。ひとたび,一府県一社の指定護国神社ができると,以前からあった県内の招魂社や招魂碑・
著者
井上 大介 INOUE Daisuke
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1-2, pp.35-56, 2023-03-20

本稿ではインターネットをはじめとする電子メディアを媒介としたコミュニケーション、相互行為が社会をどのように変容させつつあるのかという点について、宗教文化に限定して考察したものである。日本におけるデジタル・メディアと宗教に関する研究では、宗教教団がどのようにインターネットを活用しており、組織の形態や運営がどのように変化しつつあるのか、といった事例研究が中心となってきた。他方、欧米における研究動向では、Digital Religion という領域において様々な研究が、 990 年代以降蓄積されてきた。本論の前半では、同研究領域の概要を先行研究に沿って紹介し、特にそこでの理論的枠組みが宗教観、儀礼、帰属意識、共同体、権威、身体化という6つの領域である点を整理した。後半では、その中の権威について注目しつつ、キューバにおけるヨルバ系宗教であるレグラ・デ・オチャ=イファ信仰を題材に、そこにおける伝統的指導者と現代的指導者の相違点、およびそこでの師弟関係の変容および孤独化の現状に注目しつつ論を展開した。
著者
森 幸雄
出版者
創価大学
雑誌
Sociologica (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.A1-A17, 1986-12

本稿は,国勢調査の集計単位として用いられる国勢統計区を分析地域単位として,八王子市を対象に,都市構造の分析を行なったものである。なお,本稿で利用した統計の多くは国勢調査結果であるため,他の資料を利用した場合には出典を必ず記すが,国勢調査結果を利用したときには特にこれを表記しない場合もある。
著者
白 恩正 Eunjeong BAEK
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75-98, 2019-03-20

米軍政期の各界の韓国人リーダーは、戦前は朝鮮総督府の下位パートナー、戦後は米軍政の下位パートナーとなり、やがて戦後韓国の新しい政治権力へと成長した。この背景として米軍政が人材を登用する際、英語能力、親米派、反共産主義者である点は重視しながらも、戦前の親日経歴は問題視しなかった点を挙げられる。これは民族主義者、反米者、左派、中道派が排除されたことを意味する。もう一つの理由は、戦後の歴史清算の試みである「反民族行為処罰法」が失敗に終わったことである。その結果、プロテスタントは戦後の再建にあたって、戦前の神社参拝に同調・黙認していた人たちが教会のリーダーとなった。この過程において戦前の神社参拝に反対し投獄された人々は排除された。政治権力に順応的であったプロテスタントは、のちの李承晩政権の反共・単政(韓半島の単独政府)路線を支持し、朴正熙の軍部独裁政権の反共路線を支持することにもなった。これに呼応して米軍政と李承晩政権は、プロテスタントに対して積極的な優遇政策を展開する。この国家権力とプロテスタントの関係は信者の拡大に大きく寄与した。今日におけるプロテスタント教会とりわけ大型教会にみられる権力志向的な性格は戦後の歴史清算の失敗と深くかかわっていることを示した。
著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.29-56, 2019-03-20

本論では,ザカート(喜捨)を原資とする社会基金であるバイトゥル・マルを事例として,日本占領期ジャワにおけるイスラーム教理の制度化の歴史的背景を考察した.分析の結果,バンドゥン県のイトゥル・マルの導入というイスラーム教義の制度化は,ウィラナタクスマのロイスの構想とエリート官吏としての指導力,困窮者救済を義務とするイスラームの教理,そしてジャワ軍政当局のイスラーム対策の構造的欠陥と住民の動員・統制の必要性―という3つの歴史的条件が重なって行なわれたことが明らかになった.また,1942 年6月という軍政初期に導入されたバンドゥン県のバイトゥル・マルは,その規模や機能は限定的とはいえ,ジャワ軍政における事実上はじめての大衆組織としての性格をもっていたことが指摘された.