- 著者
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小幡 明彦
佐々木 和雄
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.2, pp.642-651, 1999-02-15
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
9
ビデオ画像通信を利用して, 分散した職場間のインフォーマルコミュニケーションを支援するシステムの研究が活発化している. これらのシステムではビデオ画像通信を, 会話開始前に受け手の状態を確認することで会話を開始するまでの心理的敷居を下げるためや, 意図しない相手との偶発的な会話のトリガとして利用している. 本論文では,これらのシステムにおける課題として,会話前に受け手を覗くことによって, 受け手に会話を強要する侵入感の問題と,意図しない相手との偶発的会話支援が狙いどおり発生しない問題について焦点を当て, 距離の概念の導入を試みることでこれらの問題点を解決するインタラクションモデルを提案する. また, 本モデルに基づいた実験システムオフィスウォーカを開発し, ユーザ実験により, これらの課題, および, システムの導入効果について検証する. その結果, 侵入感の問題については, 受け手が反応せざるをえなくなる状況が回避でき, 遠隔の相手の様子を気軽に見ることができようになった. 偶発的会話については, 業務グループ間におけるコミュニケーションのうち, 25%が偶発的に生じており, 意図した相手と異なる相手との会話を支援することが可能になった. また, システムの導入効果として, 問合せのカテゴリの会話が有意に増加し, 遠隔のメンバに気軽に問合せができるようになることが確認できた.