著者
玉井 昌紀 英 肇 古田 浩人 坂本 浩一 濱西 徹 木村 りつ子 巽 邦浩 下村 裕子 小林 正人 若崎 久生 松本 英作 西 理宏 中尾 大成 佐々木 秀行 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.755-758, 2004-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9
被引用文献数
2

症例は63歳, 女性, 2型糖尿病, 妄想性障害にて加療中, 自殺企図にてインスリン1200単位を皮下注射し入院となった, 約4日間低血糖が持続し, 治療のために投与したブドウ糖の総量は1.050gであった. 経過中特に重篤な合併症や後遺症を認めなかった. 本症例を含む10症例の検討では, 低血糖消失までの時間は14時間から6日で, 数百単位以上のインスリン投与例のほとんどは2日間以上低血糖が持続していた. また, 治療に要したブドウ糖総量は170-3, 100gで, 単位時間当たり平均約18gが投与されていた. 報告例は全例糖尿病患者で, 1型と2型糖尿病患者がほぼ同頻度に認められた, 基礎疾患としてうつ病などの精神疾患が多く, 再発例も2例認められたことから, 再発予防のための十分な精神的ケアも必要であると思われる.
著者
荒古 道子 中 啓吾 貴志 豊 江川 公浩 澳 親人 西 理宏 古田 浩人 中尾 大成 佐々木 秀行 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.221-225, 2004-03-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は71歳の女性で, 1999年よりプランマー病と診断されるも, 甲状腺機能異常は認めずβプロッカ-のみで治療されていたが, 2001年8月より甲状腺機能亢進症が出現し, バセドウ病の合併 (Marine-Lenhart症候群) と診断した.チアマゾール (以下MMIと略す) による治療を開始するも肝障害が出現したため入院した.肝機能障害の精査中に高インスリン血症 (IRI 82-4μU/ml, CPR 2.18ng/ml, IRI/CPRモル比0.79) の存在が確認され, 75gOGTT 2時間後でIRIは最大1, 785μU/mlまで上昇し, 3時間後には低血糖 (28mg/dl) を認めた.インスリン負荷試験で感受性は正常, インスリンレセプター抗体は陰性, インスリン抗体は7396と高値であった.HLAタイプはクラスIIのDR4, HLA-DR遺伝子解析ではDRB 1*0406であり, インスリン注射歴がないことよりインスリン自己免疫症候群 (以後IASと略す) と診断した.プロピルチオウラシルに変更後は肝機能は正常化し, 低血糖症状も認めずインスリン抗体価の低下も認められた.-ASはその発症にSH基を有する薬剤の関与が指摘されており, MMI服用により発症したと考えられるIASを経験したので報告した.

1 0 0 0 OA 橋本脳症の1例

著者
太田 敬之 山岡 博之 古川 安志 下村 裕子 中野 好夫 若崎 久夫 古田 浩人 西 理宏 佐々木 秀行 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1375-1377, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9

症例は68歳,女性.画像診断で異常を指摘できない意識障害を認めた.橋本病の存在から橋本脳症を疑い,血清抗N末端α-enolase抗体陽性であった.橋本脳症は抗甲状腺抗体に関連した自己免疫性の脳症と考えられており,多彩な神経症状を呈する.原因不明の脳症を診た場合は,本症を考慮することが重要である.比較的まれな疾患である橋本脳症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
濱西 徹 西川 寛紀 小林 正人 中尾 大成 大萩 晋也 佐々木 秀行 松本 元作 三家 登喜夫 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.53-58, 1998 (Released:2009-04-28)
参考文献数
8
被引用文献数
3

患者は26歳の男性。平成6年7月再生不良性貧血のため,同種骨髄移植を受けた。経過は順調であったが,平成7年1月腹痛が出現したため,当科入院。腹痛の精査行うも原因不明で,その間に症状は徐々に増強した。入院4日目突然両側視力低下が出現した。翌日には全身に発赤を伴う丘疹が出現し,血液検査では重篤な肝機能障害を呈した。上記の一連の症状が水痘帯状疱疹ウイルスの臓器播種によるものと診断し,アシクロビルの静脈内投与を開始し,上記症状は著しく改善した。皮疹に先立ち急激な腹痛で発症した水痘帯状疱疹ウイルス感染症は稀であるが,高率に臓器播種し致死的で,早期治療が予後を大きく左右する。したがって,骨髄移植後,免疫抑制状態にある患者において,原因不明の激烈な腹痛を認めた場合,水痘帯状疱疹ウイルス感染症を念頭に置き,早期診断に努めることが重要であると考えられた。