著者
大橋 敬司 佐田 憲映
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.81-86, 2016-02-20 (Released:2016-03-10)
参考文献数
31
被引用文献数
1

ANCA 関連血管炎は全身の中小型血管の炎症と血中への ANCA の出現を特徴とする希少な難治性疾患である. 以前は予後不良とされていたが治療法の発展により, 予後は改善されてきている. 欧米では再燃や副作用の問題解決のため盛んに臨床研究が行われ, それをもとに診療ガイドラインが策定されている. しかし, わが国における ANCA 関連血管炎は, 高齢発症, 顕微鏡的多発血管炎の比率が高いといった特徴を持ち, 多発血管炎性肉芽腫症が大半を占める欧米とは疫学的, 病態的に大きく異なるため, わが国独自の ANCA 関連血管炎診療ガイドラインが長年求められてきた. そして, 日本人患者における治療法確立のため厚生労働省研究班を中心に行われた前向き臨床研究や欧米のガイドライン, 関連学会からの意見をもとに ANCA 関連血管炎の診療ガイドラインが2011年策定された. その後, Chapel Hill 分類の改定に伴い名称変更された疾患名を反映させ, 新たな知見を盛り込んだ改訂版診療ガイドラインが2014年に発行されている. 今回は, この診療ガイドラインをもとに ANCA 関連血管炎について概説し, 新たに開発されている治療法や近年提唱された ANCA 関連血管炎性中耳炎などについても触れたい.