著者
佐藤 一男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.354-357, 2011

本稿は,日立市において小学生と中学生の理数学力向上のために企業OBたちが展開しているボランティア活動の報告である。NPO法人日立理科クラブが誕生するまでには多くの困難があったが,産官学が一体になってこれを進めてきた。日立市および教育委員会の真剣な対応と学校現場の理解,そして日立製作所の強い支援と在住する企業OBたちの豊富な人材があってこの計画が順調に立ち上がりつつあり,「モノづくりと実験」を基本とするこの教育支援は効果をあげつつある。科学創造立国・日本を堅持するためにも,知識と経験のある企業OBのさらなる活躍に期待したい。
著者
若松 孝志 高橋 章 佐藤 一男 久保井 喬 柴田 英昭
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.169-178, 2004-04-05
被引用文献数
6

アカマツ林の林床に^<15>NH_4^+を添加し,70日後までの林床植生,有機質・無機質土層への^<15>Nの移行量を調べた.さらに,室内培養実験により窒素の形態変化速度を測定し,^<15>Nの動態と微生物による窒素代謝との関係を調べた.^<15>N添加30日後の各プールヘの15N移行量は,林床植生5%,有機質上層56%,無機質土層44%であった.70日後には,無機質土層への移行量が増大したが,37%の^<15>Nが有機質土層に保持されていた.土壌水の観測結果から,無機質土層へ浸透する窒素の95%をNO_3^-が占めることが分かった.また,^<15>NH_4^+を添加したにもかかわらず,添加初期には土壌表層のNO_3^-のδ^<15>N値が著しく上昇し,またそのピークは時間の経過とともに下層に移動した.このことから,林床に沈着したNH_4^+のほとんどは,有機質土層で硝化によりNO_3^-に変化した後に,下層土壌へ移行することが裏付けられた.室内培養実験の結果,有機質土層(Oe-Oa層)における硝化速度(20mg N kg^<-1> d^<-1>)は,微生物の代謝によるNH_4^+の有機化と窒素無機化の速度(145mg N kg^<-1> d^<-1>)の1/7程度であった.このことから,大気由来のNH_4^+は林床に沈着した後,すべてが硝化に向うのではなく,微生物の窒素代謝のサイクルに取り込まれることが推察された.このことが,70日経週後も,添加した^<15>Nの4割が有機質土層に保持された主要な要因と考えられた.本調査地の有機質土層における窒素の形態変化速度は,ほぼ同量の窒素が大気から負荷されているオランダの森林よりも1桁程度大きかった.これには本調査地における温暖多雨な気候条件と酸性度の低い土壌条件が関与していることが推察された.