著者
冨岡 佳奈絵 松本 絵美 岩本 佳恵 髙橋 秀子 長坂 慶子 魚住 惠 菅原 悦子 村元 美代 渡邉 美紀子 佐藤 佳織 阿部 真弓
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】岩手県の伝統的な家庭料理を次世代に継承することを目的に地域ごとに聞き書き調査を行った。その中から、行事食の特徴と地域による違いについて報告する。</p><p>【方法】調査は、岩手県を7地域(県北・県央・中部・北上高地南部・県南・沿岸・奥羽山系)に分け、平成24〜26年に実施した。対象は、地域に30年以上居住している61〜96歳の女性18人とし、昭和30〜40年代の食事と、この頃から伝わる家庭料理について聞いた。その調査結果から、行事食の特徴について比較検討した。</p><p>【結果】正月の雑煮は、しょうゆ仕立ての角もちが基本で、沿岸では「くるみ雑煮」、県南では「ひき菜の雑煮」、かつて沿岸北部では、雑煮ではなく「まめぶ」のところがあった。雑煮のほか、沿岸では「氷頭なます」、県北では「手打ちうどん」があった。桃の節句には、県央・北上高地南部では「ひなまんじゅう」「きりせんしょ」、中部では、くるみを散らした「ごまぶかし」があった。田植えの小昼(おやつ)に、北上高地南部では「小豆まんま」があった。県南では、農作業の節目ごとに餅を食べ、冠婚葬祭にも餅は欠かせず、婚礼の際は「餅本膳」があった。一方、県北では、冠婚葬祭に「手打ちそば」だった。盆には、沿岸・北上高地南部・奥羽山系では「てん(ところてん)」、さらに奥羽山系では「カスべの煮つけ」があった。御大師様の日には、県南では「果報団子」があった。年取りには、全域で「なめたがれいの煮つけ」がみられ、沿岸では「干し魚(はも)入りの煮しめ」、奥羽山系では、ぜんまいの一本煮や凍み大根、身欠きにしんの入った「煮しめ」があった。各行事において、その時季の地場産物や気候風土をいかした食材を調理し、地域・家庭で継承されていた。</p>
著者
冨岡 佳奈絵 佐藤 佳織 阿部 真弓 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】安納イモは,水分が多く粘性の食感や甘味が強いことで知られ,熟成させると糖度が上がりおいしくなる。サツマイモは,加熱によりデンプンの糖化が進み,加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。異なる加熱方法で調理した安納イモの糊化デンプンの性状の違いをみるために組織化学的方法により調べた。【方法】サツマイモ(安納イモ、ベニアズマ)を3cm厚の輪切りにし,茹で,蒸し,オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を室温に下げてから,ドライアイス・アセトンで急速に凍結し,コールドミクロトームで薄切(厚さ:16μm)した。薄切した切片をヨウ素液および過ヨウ素酸・シッフ液で染色して糊化デンプンの性状を観察した。【結果】安納イモの内部では,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が少なかった。糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞は,茹で,蒸しおよびオーブン200℃,オーブン140℃の順に少なかった。ヨウ素染色による糊化デンプンの色調は,茹でと蒸しでは褐色から青色を呈し,オーブン200℃ではほとんどが褐色であった。オーブン140℃では,糊化デンプンは褐色を呈し,貯蔵細胞を完全に満たすことはなかった。電子レンジでは,糊化デンプンが青色に染まり,多くのデンプン貯蔵細胞を満たしていた。オーブンで加熱したものの甘味が他のよりも強かった。ベニアズマでは,加熱方法の違いにより色調の差異があり,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞が多かった。安納イモは,ベニアズマより非常に甘かった。糊化デンプンの性状の違いが,甘さの違いと関連すると考える。