著者
小池 淳司 平井 健二 佐藤 啓輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.388-399, 2012 (Released:2012-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

道路整備は,人やモノの移動時間を短縮させ,中長期的には,産業の活性化,人口集積など地域の社会・経済構造を変化させる.一方,そのような社会的メリットは,全国一律に享受できるものではなく沿線地域を中心に偏在化し,地域によっては,地元企業の衰退等のデメリットが存在することも知られている.この発展する地域・衰退する地域がどのように分かれるかは,今後の道路整備を考える上で重要な要素であり,客観的な分析が求められる.本研究では,中国地方の過去の高速道路整備が人口構造や産業活動に与えた影響を固定効果モデルにより事後的なパネルデータ分析を行った.その結果,高速道路と産業活動との間には,多くの地域で正の関係性が確認される一方で,人口構造との間には,地方部での負の関係性があることなど空間的な偏在化が示された.
著者
小俣 元美 原野 崇 佐藤 啓輔 横山 楓 片山 慎太朗 定金 乾一郎 小池 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00023, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

本稿では,道路整備のストック効果把握の一環として,空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを用いて,最初の開通から半世紀を経た全国の高規格幹線道路整備が地域経済に与えた長期的な効果とその変遷を検証する.分析の結果からは,これまでに段階的にネットワーク整備がなされた結果として,付加価値額変化では,関東・甲信越から中国地方にかけての本州エリアを中心に大きな効果が帰着している傾向にあることが分かり,このような地域の産業活動の日本経済全体の成長への貢献が確認された.一方,便益をみると,全国に広く正の効果が帰着しており,国土の均衡ある発展に高規格幹線道路が貢献していることが確認できた.
著者
宮川 愛由 西 広樹 小池 淳司 福田 崚 佐藤 啓輔 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_393-I_405, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
28
被引用文献数
3

地方創生が叫ばれる現在,大型店舗が地域に与える影響に関する知見が重要となっている.しかし,筆者らが知る限り,消費者の大型店舗での買い物が,地域経済に与える影響に関して,国内においては実証的な知見が見当たらない.そこで,本研究では,消費者の買い物店舗の選択が地域経済に及ぼす影響の検証を目的として,京都市内の様々な経営形態の食料品小売店舗を対象に調査を行い,消費者の買い物支出の帰着先を分析した.分析の結果,買い物支出のうち京都市に帰着する割合が,大型店舗では地場スーパーや地元商店の半分程度であることが示された.本研究成果は,地域活性化に向けた望ましい消費者行動とは如何なるものかについての示唆を与えると同時に,大型店舗の進出による地域活性化への期待に疑義を唱えるものといえよう.
著者
佐藤 啓輔 吉野 大介 小池 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_229-I_240, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
16

アジアの"Land-locked" countriesと呼ばれている内陸国は,貿易にかかる輸送コストの比重が大きく,これが貿易の発展を阻害する大きな要因となっている.このボトルネックを解消すべくADB等の援助機関が各国政府とともに国境をまたぐ幹線道路の整備を行っているが,これらの幹線道路の整備を各国の経済活動の活性化に繋げるには道路整備が地域経済活動へ及ぼす影響を定量的に把握することが重要である.本研究では,"Land-locked" countriesの一部の国々を対象に,現地の交通・物流状況を整理するとともに既存の統計調査結果を用いた産業・物流の実態を分析する.分析にあたっては,現状把握に加えて応用一般均衡(SCGE)モデルを適用し幹線道路整備による空間的な経済効果の波及状況を算出する.