著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.