著者
吉松 軍平 坂田 直昭 山内 聡 赤石 敏 藤田 基生 久志本 成樹 海野 倫明
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.989-992, 2012-07-31 (Released:2012-10-01)
参考文献数
17

70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。
著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.
著者
吉松 軍平 坂田 直昭 山内 聡 赤石 敏 藤田 基生 久志本 成樹 海野 倫明
出版者
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.989-992, 2012-07-31

70歳代,男性。35%過酸化水素水100mLを誤飲し,頻回の嘔吐と腹部膨満が出現。30分後,当院に搬送。右下腹部の圧痛を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CT検査で胃結腸間膜内と肝内門脈に気腫像を認め,上部消化管内視鏡検査で下部食道から胃大弯側全体に著明な発赤腫脹とびらんを認めた。過酸化水素水誤飲による上部消化管粘膜障害と門脈ガス血症が考えられたが,腹膜炎の所見はなく,意識障害や神経症状などの脳塞栓の症状を疑わせる所見も認めなかったため,絶飲食下で,プロトンポンプインヒビターとアルギン酸ナトリウムの投与を行った。腹部症状は速やかに改善し,誤飲24時間後のCTで門脈ガスは消失していた。水分/食事摂取を開始したが症状悪化はなく,入院後5日目に退院となった。過酸化水素水誤飲による門脈ガス血症は消化管穿孔を認めなければ保存的治療が可能であるが,脳塞栓などの塞栓症の前段階であり十分に注意して観察する必要がある。