著者
吉田 明子 加藤 正人 谷内 一彦
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.387-396, 2004-10-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
41

痛みの受容には多くの分子が影響を与えるが, ヒスタミンもその一つである. その作用点は, 一次性求心性神経線維と中枢ヒスタミン神経であるが, H1受容体はおもに一次性求心性神経線維上にあり, 末梢からの情報を脊髄や上位中枢へ効率よく伝達する役目を担っている. また脊髄や上位中枢にはH1受容体やH2受容体が存在して興奮性の作用を共同して担っている. とくに中枢ではH1, H2受容体ともに大脳皮質の機能賦活作用として覚醒や認知機能亢進に関与している. 最近, ヒスタミン関連遺伝子のノックアウトマウスが開発され小動物における生理学的・病態生理学的研究の新たな展開が進んでいる. 本総説では, 抗ヒスタミン薬を用いた薬物研究, 近年開発されたヒスタミン関連遺伝子ノックアウトマウス (H1, H2受容体ノックアウトマウス, ヒスタミン合成酵素ノックアウトマウス) を用いた研究, モルヒネなどのオピオイドと併用した疼痛研究の結果をもとに, 痛みの受容とヒスタミンの関与について概説する.
著者
加藤 正人 黒澤 伸
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-8, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

大侵襲手術によって, Interleukin (IL) -6をはじめとする各種の炎症性および抗炎症性サイトカインが誘導されることが知られている. また, それらのサイトカインに加えて, 好中球を遊走させるIL-8に代表されるケモカインと呼ばれる一群の炎症因子も手術侵襲により産生が増強され, 炎症細胞を局所に集積させる. これらの生体反応は適度な範囲であれば, 周術期の生体防御に有利に働くと考えられる. しかしながら, こうした反応がまったく制御されないままに過剰な生体反応として放置されると仮定すれば, むしろ免疫能をはじめとする生体防御能を抑制する方向に働き始める可能性がある.   これらの知見を含めて手術侵襲により惹起される炎症反応について概説し, さらには揮発性吸入麻酔薬による免疫抑制作用の機序についての当教室の研究を紹介するとともに, injury-induced immunosuppressionについても展望する.
著者
加藤 正人 内山 雅史 岡本 隆
出版者
中央水産研究所
雑誌
黒潮の資源海洋研究 = Fisheries biology and oceanography in the Kuroshio (ISSN:13455389)
巻号頁・発行日
no.4, pp.45-49, 2003-02

ハリセンボンは、浅海の珊瑚礁や岩礁域に生息し、津軽海峡以南の日本海沿岸、相模湾以南の太平洋岸に分布する。日本近海では南西諸島や台湾付近で産卵し、稚魚は黒潮域や対馬暖流域に出現するといわれている。房総半島沿岸では普段目にすることは希で、漁業の混獲物としてもほとんど出現しない。ところが、2002年1月、房総沿岸の定置網にハリセンボンが大量に入網し、以後4月頃まで断続的に入網が続いた。このような暖海性種の特異的な大量来遊の記録は、漁海況の変動やその要因を明らかにする上で、有益な情報になると考えられる。そこで、千葉県各定置網での入網状況と入網したハリセンボンの大きさ、他県における来遊状況を整理したので報告する。
著者
佐藤 清貴 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.352-357, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
参考文献数
48
被引用文献数
1

脳保護を目的とした全身低体温療法は1955年から行われている. 体温30℃以下での脳外科手術が多くの症例で行われたが, 循環合併症が多く, 1970年頃から行われなくなった. 1987年, 軽度低体温の脳保護効果が実験的に示され, 1990年頃から臨床応用された. 脳動脈瘤手術, 頭部外傷, 脳梗塞, 蘇生後脳症などで軽度低体温管理が行われ, 2001年以降大規模臨床試験の結果が発表された. 心停止後の蘇生後脳症, 新生児低酸素脳症では有効性が確認されたが, 脳動脈瘤手術, 頭部外傷ではnegativeの結果であった. 脳温の低下は脳保護的に作用することは明確であるが, 全身の体温低下は感染, 出血など合併症の原因となり, 最終的な予後を必ずしも改善しない. 現在のところ, 短期間の軽度低体温は蘇生後脳症などで適応となる. 脳局所の温度下降が可能となれば, さらに有効な治療手段となる可能性がある.
著者
中川 真海 加藤 正人 トウ ソウキュウ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.132, 2021

<p>広葉樹の価値は、川下の需要の状況により大きく変化するため、広葉樹林業では需要と供給のマッチングが重要であるが、現状は、マッチングがうまくいかず国産広葉樹の約9割は価値の低いチップ材となっている。樹高や胸高直径で樹形が把握でき価値が決められる針葉樹と違い、広葉樹は枝分かれや曲がりが多くあるため、需要と供給のマッチングにはレーザー計測などで得られる、より詳細な情報が必要である。しかし、レーザー計測機器は高価であり、普及が難しく、これが、広葉樹林業が伸び悩んでいる原因の一つとなっている。</p><p>本研究では、安価かつ簡便に立体モデルを作成する方法を試行し、モデルの精度を検証した。iPhone SEを用いて樹木の連続写真または動画を、角度や枚数など撮影条件を変えて撮影し、それぞれの撮影条件ごとにSfM解析を用いて立体モデルを作成した。これらの精度を検証した結果について報告する。</p>
著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.
著者
石井 光廣 加藤 正人
出版者
千葉県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.4, pp.7-15, 2005 (Released:2011-03-05)

1)東京湾に発生する貧酸素水塊の分布(底層の溶存酸素量分布)と底びき網によるスズキの漁獲位置について水塊分布とスズキ漁獲位置との対応関係について検討した。2)春季-秋季に発生する貧酸素水塊の規模にともないスズキは東京湾の富津岬以南に移動すると考えた。3)夏季湾内に残っていたスズキは、貧酸素水塊を避けるように分布し、とくに貧酸素水塊と貧酸素水塊外の境界付近で多く分布することがある。