- 著者
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佐藤 清貴
加藤 正人
- 出版者
- 日本臨床麻酔学会
- 雑誌
- 日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.4, pp.352-357, 2009-07-15 (Released:2009-08-10)
- 参考文献数
- 48
- 被引用文献数
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脳保護を目的とした全身低体温療法は1955年から行われている. 体温30℃以下での脳外科手術が多くの症例で行われたが, 循環合併症が多く, 1970年頃から行われなくなった. 1987年, 軽度低体温の脳保護効果が実験的に示され, 1990年頃から臨床応用された. 脳動脈瘤手術, 頭部外傷, 脳梗塞, 蘇生後脳症などで軽度低体温管理が行われ, 2001年以降大規模臨床試験の結果が発表された. 心停止後の蘇生後脳症, 新生児低酸素脳症では有効性が確認されたが, 脳動脈瘤手術, 頭部外傷ではnegativeの結果であった. 脳温の低下は脳保護的に作用することは明確であるが, 全身の体温低下は感染, 出血など合併症の原因となり, 最終的な予後を必ずしも改善しない. 現在のところ, 短期間の軽度低体温は蘇生後脳症などで適応となる. 脳局所の温度下降が可能となれば, さらに有効な治療手段となる可能性がある.