著者
小圷 知明 小野田 祥人 大柳 琢 相澤 俊峰
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.110-118, 2022-02-20 (Released:2022-02-20)
参考文献数
12

はじめに:化膿性脊椎炎重症例に対して,敗血症診療ガイドラインを遵守するとともに,明確な目的・適切なタイミングを意識した整形外科的治療介入を行った.診療の実際と治療成績を調査した.対象と方法:2008年4月以降10年間に東北大学病院高度救命救急センターで治療した,椎体周囲・硬膜外腔に膿瘍を形成した化膿性脊椎炎重症例27例を対象とした.電子カルテから診断・治療内容,画像所見,ガイドライン遵守の有無,転帰等を調査した.結果:全例でガイドラインを遵守した初期対応が行われ,1例を除き起炎菌を同定した.穿刺・ドレナージ術を25例(93%),手術を18例(67%)に行い,1例が死亡,26例が生存退院(自宅退院5例,転院21例)した.結語:敗血症診療ガイドラインに基づいた初期対応に整形外科的治療介入を加えた当施設の包括的治療戦略を呈示し,その結果を報告した.
著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.