著者
中島 経夫 藤岡 康弘 前畑 政善 大塚 泰介 藤本 勝行 長田 智生 佐藤 智之 山田 康幸 濱口 浩之 木戸 裕子 遠藤 真樹
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.261-270, 2001
被引用文献数
5

1998年3月から2000年11月にかけて,琵琶湖南湖周辺の10市町村の琵琶湖岸,内湖,河川,水路,池など879地点を調査し,16科42属55種(亜種を含む)の魚類を採集した。オイカワ,カワムツA型,カワムツB型,タモロコ,カマツカ,ギンブナ,アユ,トウヨシノボリなどの在来種は多くの調査地点に分布していた。一方,外来種のブルーギルやオオクチバスも多くの調査地点で採集された。分布パターンを魚種で分類するためにクラスター分析を行った結果,AからDの4つのクラスターが不明瞭ながら認められ,分布パターンと地形との間に関係が認められた。オイカワやカマツカに代表されるクラスターAとタイリクバラタナゴやメダカに代表されるクラスターBの多くは,デルタ帯,扇状地帯に広く分布するが,カワムツA型やタモロコに代表されるクラスターBの一部はデルタ帯に分布しない。その一方で,カワムツB型に代表されるクラスターCは丘陵地に分布し,ブルーギル(クラスターD)はデルタ帯に分布していた。タモロコやカワムツA型などクラスターBの一部の魚種はブルーギルの影響を強く受けているものと思われた。
著者
尾崎 正紀 水野 清秀 佐藤 智之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

5万分の1富士川河口断層帯及び周辺地域の地質編纂図は,既存の地質図情報と活断層調査の成果に,産総研の「沿岸域の地質・活断層調査」プロジェクトで実施した入山瀬断層の成果を加えて作成した,海陸のシームレス地質情報集である.本図は,研究及び減災に活用されるよう国土の基盤情報図となりうることを目的としており,今後の研究成果に基づき修正を行う予定である.また,大縮尺の編纂図では,編集部分と確認部分が識別できるように,どのように断層などの精度・確度を表現するかが課題として残されている. 本地域は駿河湾北縁部に位置し,蒲原丘陵,星山丘陵,鷺ノ田丘陵,富士川扇状地,浮島ヶ原,富士南西側山麓,天子山地及び蒲原山地を含む.また,後期中新世〜鮮新世のトラフ充填堆積物である富士川層群,鮮新世の佐野川岩体,前期〜中期更新世の前縁盆地に形成された主に海陸の扇状地堆積物からなる蒲原層及び鷺ノ田層,第四紀の火山(前期〜中期更新世の岩淵火山岩類,中期〜後期更新世の愛鷹火山,後期〜完新世の富士火山),後期更新世〜完新世の河川〜浅海成堆積物が分布する.入山瀬断層,大宮断層,安居山断層,入山断層,芝川断層などからなる富士川河口断層帯は,ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に位置し,東西圧縮場で概ね南北方向の断層と褶曲で特徴づけられる. 富士火山の溶岩流と古富士泥流(津屋,1968など)は,これら富士川河口断層帯の変位量推定の重要な基準となっていた.しかし,最近の富士火山の新層序(山元,2014など)に基づくと,古富士泥流は火山麓扇状地Ⅳ堆積物(離水面はMIS4)と火山麓扇状地Ⅲ堆積物(離水面はMIS2)に区分され,活断層の変形を受けた溶岩流の一部も層序と年代が修正されている.これらに基づき既存研究の見直しを行った結果,一部,従来の基準面の設定及び平均変位速度には再検討が必要であることが分かった.また,富士川河口断層帯との関係を理解するため,下部~中部更新統の層序と地質構造の再検討を行った.以下,その概要を示す.(1)入山瀬断層は,今回実施した陸域沿岸域の反射法地震探査(伊藤・山口,2016)及びボーリング調査(石原・水野,2016)と,沿岸海域の反射法音波探査(佐藤・荒井,2016)の成果に基づき,沿岸域の連続性が明らかとなった.また,蒲原地震山を挟んで雁行ないし並行した2つの断層が発達している可能性が高いことが分かった.(2)入山瀬断層の平均変位速度7m/103年は,上盤側の水神溶岩流と富士川扇状地下の大淵溶岩流が同じ溶岩流であるとし,その分布標高の差から求められていた(山崎,1979).しかし,水神溶岩流は富士川沿いから南東へ流れ出たもので1.7万年前の年代を示すのに対して,大淵溶岩流は富士南南西側山麓から南西へ流れ出たもので年代も約1万年と異なる.また,山崎(1979)は,村下(1977)による扇状地下の溶岩流は標高分布から,下盤側の両溶岩流の比高を推定して,それを入山瀬断層の変位基準としていた.しかし,村下(1977)の図では,富士川扇状地下の富士宮期溶岩流の分布は南西方向に低下する1万年前の富士山麓の形状を示しており,入山瀬断層の東側沿い幅約2kmの松岡から五貫島に至る地域のボーリング資料には溶岩流がほとんど認められない.この地域は,入山瀬断層による沈降が著しい地域であると同時に,最終氷期以降,古富士河川による最終間氷期の下刻作用と後氷期の堆積作用が行われた地域のため,基準となる溶岩や古富士泥流が連続して分布していないと考えられる.更に,約1万年前と約1.7万年前とでは,海水準が60〜70mも異なり(例えば, Siddall et al., 2003),その影響も考慮しなければならない.現状では,これらの諸条件の組み合わせにより,入山瀬断層の変位量は,既存の値より大きくも,小さくもなりうる.このため,入山瀬断層の正確な平均変位速度を推定するためには新たな調査が必要である.(3)入山瀬断層と同様に,大宮断層や安居山断層の溶岩流や古富士泥流堆積物を基準とした平均変位速度の推定についても,見直しの必要がある.しかし,再検討した結果,従来の見積を変更する必要はほとんどなかった.(4)芝川断層及び入山断層は,地質断層としては連続するものの,活断層として連続する可能性は低い.両断層が屈曲しながら接合する富士川周辺では,地質断層とは斜交する南北方向の長さ0.5-1kmほどの断層が幾つか発達する.これら断層のうち,月代断層(大塚,1938)は活断層であると考えられる.(5)星山丘陵及び羽鮒丘陵に分布する下部〜中部更新統の地質構造は,中期更新世までの変形の影響を大きく受けており,富士川河口断層帯による変形とは合致しない.[引用文献]石原武志・水野清秀(2016) 海陸シームレス地質情報集(S-5),「駿河湾北部沿岸域」,産業技術総合研究所地質調査総合センター.伊藤 忍・山口和雄(2016) 海陸シームレス地質情報集(S-5),「駿河湾北部沿岸域」,産業技術総合研究所地質調査総合センター.村下俊夫 (1977) 工業用水,no.225,30-42.彌之助 (1938) 地震彙報,16,415-451.Siddall et al. (2003) Nature, 423, 853-858.佐藤智之・荒井晃作(2016) 海陸シームレス地質情報集(S-5),「駿河湾北部沿岸域」,産業技術総合研究所地質調査総合センター.津屋弘逵(1968) 1:50,000富士火山地質図及び富士火山の地質.特殊地質図, no.12,地質調査所.山元孝広 (2014) 地質調査総合センター研究資料集,no.606,産業技術総合研究所地質調査総合センター.山崎晴雄 (1979) 月刊地球,1,571-576.
著者
増田 富士雄 佐藤 智之 伊藤 有加 櫻井 皆生
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.5, pp.892-904, 2013
被引用文献数
2

 We propose Shazam stratigraphy as a new analytical method based on facies analysis and sequence stratigraphy. This method is applied to a recently developed borehole database and subsurface geology in the Osaka Plain. Using the method, the shapes of lithofacies boundaries in subsurface sections are optimized for sedimentary faces and changes. The optimized boundary allows interpretation of seismic sections. The result is better recognition and reconstruction of depositional systems, geomorphological evolution, and tectonics. Irregular sequence boundaries, flat transgressive ravinement surfaces, and sawtooth downlap surfaces of the prograding depositional system are key boundaries for this method.
著者
大上 雅史 松崎 由理 松崎 裕介 佐藤 智之 秋山 泰
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.91-106, 2010-10-25

タンパク質間相互作用 (Protein-Protein Interaction,PPI) に関するネットワークの解明は,細胞システムの理解や構造ベース創薬に重要な課題であり,網羅的 PPI 予測手法の確立が求められている.タンパク質立体構造データ群から網羅的に相互作用の可能性を予測するために,我々は立体形状の相補性と物理化学的性質に基づくタンパク質ドッキングの手法を研究してきた.本研究のプロジェクトの一環として新たに開発した MEGADOCK システムは,高速なドッキング計算を行うための様々な工夫を取り入れており,なかでも rPSC スコアと呼ぶスコア関数は,既存ツールの ZDOCK と比べて同等の精度を維持しながらも約 4 倍の速度向上を実現し,網羅的計算を現実のものとした.本論文では MEGADOCK システムの構成および計算モデルについて述べる.ベンチマークデータセットに適用した結果,従来手法を大きく上回る最大 F 値 0.415 を得た.さらにシステム生物学の典型的な問題の 1 つである細菌走化性シグナル伝達系のタンパク質群に MEGADOCK を応用した.その結果,既知の相互作用の再現をベンチマークデータと同等の精度 (F 値 0.436) で行うことに成功し,かつ生物学的に相互作用の可能性が高い組合せであるにもかかわらず,現在までに報告されていないものとして,CheY タンパク質と CheD タンパク質の相互作用の可能性を示唆した.
著者
荒井 晃作 井龍 康文 町山 栄章 井上 卓彦 佐藤 智之 松田 博貴 佐々木 圭一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

琉球弧の一部である沖縄島及び宮古島の間には広いプラットフォーム状(平らな高まり)の地形が存在している.本研究ではこの高まり状の地形の地質学的な発達史に関して,島嶼の沈降という切り口で研究を進めた.プラットフォーム状の地形は,その縁辺における断層運動に伴って,壊れるように沈降していること.プラットフォームの高まり自体はほぼ安定していて,約1万数千年前の最終氷期にはサンゴ礁が存在していた可能性が高いことが明らかになった。