著者
石川 信一 岩永 三智子 山下 文大 佐藤 寛 佐藤 正二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.372-384, 2010-09-30
被引用文献数
8

本研究の目的は,小学校3年生を対象とした集団社会的スキル訓練(集団SST)の実施による進級後の抑うつ症状への効果を検討することであった。本研究では,ウェイティングリストコントロールデザインが採用された。対象児童は,先に集団SSTを実施する群(SST群114名)と,SST群の介入終了後,同一の介入がなされるウェイティングリスト群(WL群75名)に割り付けられた。集団SSTは,学級単位で実施され,上手な聞き方,あたたかい言葉かけ,上手な頼み方,上手な断り方,教師に対するスキルの全5回(1回45分)から構成された。加えて,獲得された社会的スキルの維持促進の手続きとして,終了後に集団SSTのポイントが記述された下敷きを配布し,進級後には教室内でのポイントの掲示,ワンポイントセッション,ブースターセッションといった手続きが採用された。その結果,SST群とWL群において,訓練直後に社会的スキルの上昇がみられ,進級後もその効果が維持されていることが示された。さらに,訓練群とWL群は,1年後の抑うつ症状が有意に低減していることが示された。以上の結果を踏まえ,早期の抑うつ予防における集団SSTの有効性と有用性に加え,今後の課題について議論がなされた。
著者
石川 信一 戸ヶ崎 泰子 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.572-584, 2006-12-30
被引用文献数
1

本稿の目的は,児童青年に対する抑うつ予防プログラムのレビューを行うことであった。初めに,抑うつのリスクファクターには,個人的要因,社会的要因,認知的要因,家族の要因,外的な出来事要因があることが示された。このリスクファクターを軽減するための予防的介入要素は以下の4つに分類できることが分かった。(1)環境調整,(2)社会的スキルの獲得,(3)問題解決能力の向上,(4)認知への介入である。次に,予防研究をユニバーサルタイプとターゲットタイプ(indicatedとselectiveの予防プログラム)の2つに分類した。先行研究の多くは,ターゲットタイプのプログラムは抑うつの予防に効果があることを示している。一方,ユニバーサルタイプの結果は一貫していない。特に,長期的予防効果についての実証はあまりなされていない。最後に,抑うつ予防研究における実践と研究における示唆について議論がなされた。