著者
宮澤 賢司 依田 一豊 原田 岳 井田 恵 平山 伊知郎 何 方 平松 優
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.12-17, 2017-03-10 (Released:2018-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

Lactobacillus rhamnosus GG(LGG 菌)摂取が便秘傾向な女性の排便および皮膚性状に及ぼす影響を投与前後比較試験にて検討した。便秘傾向および皮膚の乾燥を自覚している女性 16 名に 4 週間、LGG 菌(1.4 × 1010 cfu/day)を摂取させた。LGG 菌の摂取により、排便回数は試験開始時の 3.0 回/週から試験終了後には 5.4 回/週と増加し(p<0.01)、便性においては、便の色および形(p<0.05)、排便感(p<0.01)が改善した。皮膚の状態は、皮膚画像解析装置(VISIA)での分析により、皮膚の毛穴、色ムラが改善された(p<0.01)。また、試験前と比較し、頬および前腕部の角層水分量が高まっており(p<0.01, p<0.05)、医師の診断では、皮膚の乾燥および丘疹(p<0.01)、紅斑(p<0.05)が試験前より改善していた。Skindex-16 および被験者のアンケートにより、皮膚の状態は試験終了後に有意に改善し(p<0.01)、自覚症状も改善していた。本試験から、LGG 菌の摂取による便秘および皮膚の状態の改善が認められた。
著者
高木 和子 依田 一豊 宮澤 賢司 原田 岳 何 方 平松 優
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-15, 2016-04-15 (Released:2017-04-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1

In this study, we compared the physicochemical properties and sensory attributes of low temperature pasteurized (LTLT) milk and ultra-high temperature treated (UHT) milk, both of which were produced using the same raw milk. The consumer tests indicated that the odor, sweetness, thickness, and after-taste were weaker in the LTLT milk compared to that in the UHT milk (p<0.01) and that the LTLT milk was more refreshing than the UHT milk (p<0.01). Although the taste of UHT milk was more familiar than that of the LTLT milk (p<0.05), there was no difference in palatability of the two milks. The odor of the LTLT milk resembled that of raw milk when the odor was analyzed at 40°C, 50°C, and 60°C by using an odor sensor. However, the odor of UHT milk was different from that of both the LTLT milk and the raw milk. The viscosity of the LTLT milk was lower than that of the UHT milk (p<0.05). The hardness of custard puddings prepared using LTLT milk was lesser than that of custard puddings prepared using UHT milk (p<0.01). In addition, the sensory evaluation with the expert panel indicated that the custard pudding prepared using LTLT milk was softer and had a better melting feeling in the mouth compared with that prepared using UHT milk (p<0.01).
著者
高木 和子 山崎 和幸 水上 裕造 早川 文代 何 方 平松 優
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.230-235, 2020-07-15 (Released:2020-07-29)
参考文献数
19

本研究では,加熱殺菌工程が異なる各種牛乳(LTLT牛乳,HTST牛乳,UHT牛乳)をホットミルク(50~60℃程度)の状態にし,熱履歴の違いが風味特性に与える影響を官能評価で調べた.その結果,工程での熱履歴の低いLTLT牛乳およびHTST牛乳はホットミルクにしても生乳に近い風味で,「生乳感」「乳の自然な風味」「すっきり感・さっぱり感」が強く,「加熱臭」が弱いことが確認された.さらに同地域,同工場で同時期に製造されたLTLT牛乳UHT牛乳から香気エキスを抽出,GC-MSおよびGC-O(におい嗅ぎ)に供し,各牛乳の特徴的香気成分をAEDA(希釈分析法)で明らかにした.そして,LTLT牛乳の特徴的香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenal,UHT牛乳の特徴的香気成分sotolonの牛乳への添加試験を行い,LTLT牛乳の風味特徴にフルーティで甘い香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenalが,UHT牛乳の風味特徴にカラメル様の香気成分sotolonが関与していることが示唆された.また,香気成分の添加のみで熱履歴の異なる牛乳の風味特性に近づくことが確認され,特にLTLT牛乳の特徴的香気成分trans-4,5-epoxy-(E)-2-decenalを加熱臭が生じているUHT牛乳製品に添加し,加熱臭が軽減できたのは興味深い.本研究では牛乳の熱履歴が風味に与える影響を調べたが,今後は餌,土壌,環境,牛種,製造工程等の違いと風味の関係を精査し,原因成分の同定まで試みたいと考えている.それら成分と消費者嗜好の相関を調べ,嗜好多様性に応える牛乳を市場に提供できれば,消費者の選択肢が拡がり牛乳市場の活性化が期待できると思われる.