著者
山本 瑠美子 林 周作 光田 信明 石井 桂介
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.257-262, 2021 (Released:2021-09-06)
参考文献数
10

目的:分娩直前の遷延一過性徐脈または胎児徐脈(以下,直前徐脈と呼称)の新生児アシデミアに対する診断特性を明らかにし,胎児心拍数陣痛図所見の付加による診断特性の変化を検討する. 方法:当院2年間の正期産単胎症例を対象とし,分娩30分前までの直前徐脈の新生児アシデミア(臍帯血pH<7.2)に対する診断特性を算出した.さらに多変量ロジスティック回帰分析で新生児アシデミアに関連する胎児心拍数陣痛図所見を抽出し,その所見を加えた場合の診断特性も算出した. 結果:解析対象2,480例中362例に直前徐脈を認め,直前徐脈の新生児アシデミアに対する陽性的中率は17.7%だった.直前徐脈前の頻脈とレベル≧4,直前徐脈の時間≧6分と細変動減少が新生児アシデミアと関連し,これらの付加により陽性的中率は上昇した. 結語:直前徐脈の新生児アシデミアに対する陽性的中率は胎児心拍数陣痛図所見を加えることにより向上した.
著者
吉野 愛 金川 武司 林 周作 石井 桂介 光田 信明
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1051-1055, 2017-08-01

稽留流産の治療として待機的管理または外科的治療が行われている。当センターでも治療法の選択肢として外科的治療だけでなく待機的管理も選択肢として提示している。しかし,各治療成績についてのわが国の報告はまだない。そこで,当センターでの各治療法の成績を比較・検討した。対象は2011 年1 月〜2015 年12 月に当センターで稽留流産と診断した症例とした。診断時の患者希望により,待機的管理群(待機群),外科的治療(D & C)群に分け,各治療法の入院・追加処置を要する合併症発生率の比較,待機群で診断から14・21・28 日目までの胎囊排出率を求めた。対象となった稽留流産は326 例で,待機群は184 例,D & C 群は142 例であった。合併症発生率は,待機群で8%,D & C 群で6%に認め,有意差はなかった(P=0.51)。待機群での,14・21・28 日目までの胎囊排出率は,それぞれ68%・80%・86%であり,診断から21 日目までに大部分の症例で排出していたことがわかった。