- 著者
-
田村 直俊
光藤 尚
- 出版者
- 日本自律神経学会
- 雑誌
- 自律神経 (ISSN:02889250)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.3, pp.162-169, 2019 (Released:2019-09-27)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
-
2
脳脊髄液(CSF)減少症の原因は,潜在的な外傷によるCSF漏出と説明されているが.1970年代以前はCSF漏出の有無にかかわらず,CSFの産生低下によって生じると推定されていた.Hosemann(1909),Haug(1932)は腰椎穿刺後CSF減少症の原因として,現在でいう体位性頻脈症候群(PoTS)による代償性のCSF産生低下を考察した.Schaltenbrand(1938,40)は自然発生性CSF減少症におけるキサントクロミーの存在を強調し,CSFの蛋白量は血管周囲腔由来のCSFの方が脈絡叢由来のCSFより高値のため,本症の原因は脈絡叢のCSF産生低下であると主張した.Geller(1940)はCSF減少症患者の大多数が基礎疾患としてPoTSを有することを報告した.最近,CSF減少症とPoTSの共存が示唆されており(Grafら,2018),1970年代以前の研究を再評価する必要がある.