- 著者
-
田村 直俊
- 出版者
- 日本自律神経学会
- 雑誌
- 自律神経 (ISSN:02889250)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.105-109, 2022 (Released:2022-04-23)
- 参考文献数
- 32
Schaltenbrand(1936,53))は,脳脊髄液(CSF)が脈絡叢由来の液体と血管周囲腔由来の液体の混合物であること(二元産生説),CSF減少症が自律神経の異常によるCSF産生低下で生じることを記述した.Edvinssonら(1972,73)は,脈絡叢におけるadrenaline作動性とcholine作動性の二重神経支配を確認した.Pappenheimerら(1962)はトレーサーを加えた液体でCSF腔を灌流して,トレーサーのクリアランスからCSF産生量を算出する方法を考案し,Haywood(1976),Lindvallら(1978)は本法を用いて,交感神経刺激でCSF産生が低下することを示唆した.しかし,本法はCSFの産生部位が脈絡叢だけであるという誤った前提(一元産生説)によっていることが指摘されたので,1980年代以降,CSF産生の自律神経制御を検討した報告はない.