著者
井畑 真太朗 山口 智 光藤 尚 小内 愛 堀部 豪 久保 亜抄子 山元 敏正
出版者
一般社団法人 日本頭痛学会
雑誌
日本頭痛学会誌 (ISSN:13456547)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.600-603, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
15

症例 : 47歳,女性.主訴 : 頭痛.現病歴 : X-1年1月当院脳神経内科を受診,同年5月よりエレヌマブの臨床試験に参加.X年5月臨床試験終了後より片頭痛の日数が増加したため,X年12月鍼外来紹介受診.片頭痛予防と頸肩部の筋緊張緩和を目的に頸肩部に位置する経穴に週1回鍼治療を実施.評価は頭痛ダイアリーを用いた.鍼治療前には1ヵ月の片頭痛日数14日,エレトリプタン服薬数14錠であったが,鍼治療3ヵ月後の片頭痛日数4日,エレトリプタン5錠に減少.鍼治療はcalcitonin gene-related peptide (CGRP) 関連製剤使用後に増加した片頭痛日数とトリプタン服薬数を減少させる可能性がある.
著者
井畑 真太朗 山口 智 菊池 友和 小内 愛 堀部 豪 伊藤 彰紀
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.53-58, 2021 (Released:2021-10-28)
参考文献数
12

【目的】突発性難聴(以下SSNHL)は原因不明の感音性難聴である。高齢者で眩暈を伴う重度SSNHLでは、発症2週間以内に症状が改善しないと予後不良と言われている。今回、耳鼻科で予後不良と診断され発症約1ヶ月後より鍼治療を開始し聴力回復が認められた症例を経験したので報告する。 【症例】74歳女性、主訴:左難聴、既往歴:18年前右聴神経腫瘍の手術により右重度難聴、現病歴:X年10月4日から特に誘因なく左難聴を自覚、両側難聴になり、対話不能。同日耳鼻科を受診、左SSNHLと診断。鼓室内ステロイド注射を施行。X年10月13日より回転性眩暈出現、左SSNHLも改善せず、X年10月21日より当院神経耳科にて入院。重度感音難聴(grade4)を認め、同日から薬物療法、星状神経節ブロックを連日開始。X年10月30日、経過不良、また頸肩部の張り感を自覚した為、神経耳科より鍼治療の診療依頼。神経学的所見は左右難聴を認める以外は全て正常。板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋に筋緊張。鍼治療方針は内耳の血流改善、頸肩部筋群緊張緩和を目的に天柱、風池、肩井及び左翳風に40mm16号鍼置鍼10分を入院中週3回、退院後週2回実施。評価はオージオグラムで測定。 【結果】初診時左91.3dB、右96.3dBの為、筆談で医療面接。1週間後左82.5dB右92.5dBと回復が認められ対話が可能となり、4ヶ月後の鍼治療終診時左68.8dB右86.3dBと回復した。聴力回復判定では回復(10-30dB未満改善)の値、重症度分類ではgrade4→grade3に回復した。 【考察および結語】本症例は、頸肩部の鍼治療で、内耳動脈を介して蝸牛の血流及び有毛細胞に何らかの影響を及ぼしたものと考える。以上より、今後、予後不良の重度SSNHL患者に対して西洋医学的治療に追加する治療オプションとして鍼治療は有用性が高い可能性が示唆された。
著者
堀部 豪 荒木 信夫 小内 愛 井畑 真太朗 山口 智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.34-40, 2023-02-01 (Released:2023-06-01)
参考文献数
25

【目的】神経サルコイドーシスは両側末梢性顔面神経麻痺の原因疾患の一つであるが、 これに対して鍼治療を実施した報告は我々が調査した限り存在しない。 今回、 両側末梢性顔面神経麻痺を発症、 神経サルコイドーシスが強く疑われた患者に対して鍼治療を実施し良好な経過を認めた症例を報告する。 【症例】73歳男性。 主訴:両側顔面神経麻痺。 現病歴:X年7月24日に右顔面神経麻痺発症、 27日に左顔面神経麻痺発症。 8月2日に当院脳神経内科を受診、 翌日に精査加療のため入院。 精査により神経サルコイドーシスが強く疑われステロイドパルス療法を実施。 8月26日に退院するも両側顔面神経麻痺は残存、 9月13日に当科を受診し鍼治療が開始。 身長159cm。 体重48.6kg。 神経学的所見:バレー徴候陰性、 病的反射陰性、 上下肢の深部腱反射や感覚検査は正常。 MMTは左足関節背屈のみ3。 柳原法:右26点、 左10点。 顔面神経を目標とした鍼通電刺激による表情筋収縮反応は、 右は0.04mAで収縮あり、 左は0.30mAで収縮なし。 右は軽度、 左は重度麻痺と考え、 麻痺の改善・後遺症の抑制を目的に鍼治療を実施。 鍼治療方法:右は聴会 (GB2)・下関 (ST7) へ鍼通電療法。 左は前頭筋、 眼輪筋の上・下、 上唇鼻翼挙筋、 鼻筋、 大・小頬骨筋、 口輪筋、 口角下制筋、 広頚筋へ置鍼治療を10分間実施、 106病日からは同部位に非同期鍼通電療法を実施。 治療頻度:週1-2回。 評価:柳原法。 経過:脳神経内科から処方されたステロイド薬に鍼治療を併用し、 右は170病日に38点、 左は204病日目に38点となった。 【考察・結語】本症例への治療効果は薬物治療と鍼治療の併用効果と言える。 神経サルコイドーシスが疑われた両側顔面神経麻痺患者に対して、 顔面神経の障害程度を考慮した鍼治療を実施した結果良好な治療成績を認め、 鍼治療は治療法の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。

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著者
小川 卓良 金井 正博 黒川 胤臣 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 小内 愛 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.693-706, 2010 (Released:2011-01-20)
参考文献数
19

今回が3回目の 「がんと鍼灸」 のパネルディスカッションである。 西洋医学のがん或いはがん患者に対しての攻撃的で深刻な副作用を伴い、 かつ免疫能を減退させる医療が適切か否か多くの医師・識者より疑問視されている現状がある。 それに対し副作用が無く、 QOLを高め、 免疫能を賦活する鍼灸治療はがん患者の予防から緩和ケア・再発防止までのあらゆる場において有用性は高いとの期待があり、 その成果は蓄積されつつある。 第1回で緩和ケアでの有用性を、 第2回では内外の文献調査結果を報告した明治国際医療大学の福田氏は今回がん化学療法による末梢神経障害に対し鍼治療の安全性と有効性について報告した。 防衛医科大学校の黒川氏は大学病院での補完療法としてがん患者の身体・精神症状の改善、 QOLの改善、 副作用の軽減、 術前・術後の障害対策等に鍼治療を行いその有効性について述べた。 埼玉医科大学の小内氏は、 大学病院での併療治療としての鍼治療の有効性と有効性の背景因子に言及された。 森ノ宮医療大学の中村氏は非摘出のがん患者の化学療法の副作用に対し長期に灸治療を行い、 その有効性について報告した。 以上は、 化学療法と放射線療法を併用した状態での鍼灸治療の有効性、 特に副作用の軽減とQOLの改善に鍼灸治療は有効であるという報告であったが、 第1回より一貫して主に術後の再発予防を目的とした西洋医学的治療を一切含まない鍼治療を含む自律神経免疫療法で報告された素問八王子クリニックの真柄氏は、 免疫に関わる種々のサイトカインの増加等による免疫力の改善や、 時に非摘出の進行癌でさえ縮小が可能であること、 今回は特に自身の臨床例における再発率を現代医学のそれと比較して数段再発率が低いことを報告し、 癌の再発予防に自然治癒力に関する研究に、 今迄以上の関心を持つべきであると強調した。 今回は更に今迄以上がんの鍼灸治療の大規模研究が望まれた結果になった。