著者
杉崎 宏哉 児玉 真史 市川 忠史 山田 圭子 和田 英太郎 渡邊 朝生
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.57-68, 2013 (Released:2014-06-11)

安定同位体比を用いた海洋の生態系構造の解析では,基礎生産者の安定同位体比の特定が困難なことが食物網解析の障害となっている。本研究では,摂餌過程における炭素・窒素安定同位体濃縮の歴史的経緯をまとめた上,生物種の安定同位体比を同位体マップ上に整理し,食物網構造や栄養段階の推定手法を紹介した。食物網に沿って炭素・窒素同位体比の関係は線形一次式で表せ,摂食過程における炭素・窒素の同位体分別をそれぞれ3.3‰,2.2‰,その比を1.5に設定することで対象とする動物の同位体比から同位体マップ上に食物網の直線を描くことが可能となった。その結果を用いて三陸沿岸と沖帯の食物網同位体予測モデルを提示した。さらに試料採取法・処理法について再考察し,安定同位体精密測定法の今後の展望についても触れた。
著者
田中 勝久 児玉 真史 熊谷 香 藤本 尚仲
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.163-172, 2004-03-05
被引用文献数
10

筑後川河口域において濁度とクロロフィル蛍光の連続観測をノリ施業期の2002年9月から2003年4月初旬まで約半年間にわたって実施し,潮汐変動との関連を調査研究した。クロロフィル蛍光強度は高濁度の大潮干潮時に増大し,濁度と対応した大きな短期的増減を示した。しかし,濁度の低下する満潮時のデータで比較するとクロロフィル蛍光強度から推定される植物プランクトン現存量は,日射量が極端に低下した2002年12月後半および小潮時に塩分が低下した2003年2月を除くと,小潮時から中潮にかけて増大するが大潮時以降には安定または減少する傾向が認められた.小潮時には,表層塩分の低下(弱混合化・成層化)が進み,表層へ高栄養塩濃度の河川水が影響するとともに透明度の上昇による光条件の好転などにより表層での植物プランクトンの増殖が促進されたものと考えられる。一方,強混合となる大潮時は淫祀の巻き上がりにより透明度が低下し,植物プランクトンは光量不足や物理的分散作用(鉛直混合および沖合水との混合),さらに淫祀による凝集作用により現存量の増大が抑えられると考えられる。