著者
杉崎 宏哉 児玉 真史 市川 忠史 山田 圭子 和田 英太郎 渡邊 朝生
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.57-68, 2013 (Released:2014-06-11)

安定同位体比を用いた海洋の生態系構造の解析では,基礎生産者の安定同位体比の特定が困難なことが食物網解析の障害となっている。本研究では,摂餌過程における炭素・窒素安定同位体濃縮の歴史的経緯をまとめた上,生物種の安定同位体比を同位体マップ上に整理し,食物網構造や栄養段階の推定手法を紹介した。食物網に沿って炭素・窒素同位体比の関係は線形一次式で表せ,摂食過程における炭素・窒素の同位体分別をそれぞれ3.3‰,2.2‰,その比を1.5に設定することで対象とする動物の同位体比から同位体マップ上に食物網の直線を描くことが可能となった。その結果を用いて三陸沿岸と沖帯の食物網同位体予測モデルを提示した。さらに試料採取法・処理法について再考察し,安定同位体精密測定法の今後の展望についても触れた。
著者
須賀 利雄 齊藤 寛子 遠山 勝也 渡邊 朝生
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-118, 2013 (Released:2020-02-12)
参考文献数
32

亜熱帯循環の通気密度躍層下部(σθ=26.3~26.6kg m-3)の等密度面が冬季にアウトクロップする亜寒帯前線帯では,主に移行領域モード水(TRMW ; S<34.0)が形成されることをArgo データの解析から示した.さらに,密度変化を補償し合う水温・塩分前線を横切る鉛直シアー流がソルトフィンガー型二重拡散対流を引き起こし,TRMW は形成後速やかに高温・高塩分化して,その一部が重い中央モード水(D-CMW ; S>34.0)に変質し得ることを示した.また,シノプティックなXCTD 断面の解析から,亜寒帯前線帯から沈み込んだTRMW やD-CMW などの低渦位水の一部は,中規模渦によって平均流を横切って南に運ばれた後に,亜熱帯循環の通気密度躍層内に広がっていることが示唆された.この輸送過程は,亜寒帯前線帯の深い冬季混合層と亜熱帯循環内に広がる等密度面上の低渦位舌が気候値の流線で直接結ばれていない理由を説明し,TRMW の変質過程とともに,亜寒帯前線帯起源の水塊が亜熱帯密度躍層の維持に寄与するメカニズムを担っている可能性がある.
著者
安田 一郎 渡邊 朝生 日比谷 紀之 川崎 清
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では「北太平洋中層水の元である亜寒帯水の亜熱帯への中層への流入が変化することにより、黒潮・黒潮続流の表層海流系を長期的に変化させる」という作業仮説を立て、データ解析・数値モデル実験・観測を行った。まず、(1)流速等観測資料を整理することにより、親潮水が西岸境界流として南下し風成循環境界を横切って亜熱帯循環域に流入する過程と亜寒帯前線に沿う渦混合過程の2つの過程を通じて、計10Svもの亜寒帯水が亜寒帯から亜熱帯へ輸送されることが明らかとなった。(2)北太平洋水平1/4度の3層モデルを用いて、オホーツク海における中層の層厚を観測データに合うように深層から中層へ等密度面を横切る輸送3Svを与えた結果、ほぼ同じ量の海水が西岸境界付近の親潮を通じて循環境界を横切り、亜熱帯循環域に流入することが明らかとなった。オホーツク海周辺海域での強い潮汐混合に伴う等密度面を横切る湧昇とオホーツク海低渦位水の形成・親潮南下・亜寒帯から亜熱帯への中層水輸送の関係を理論的に解明することができた。(3)黒潮続流域において、垂下式超音波流速計・走行式水温塩分プロファイラによる詳細な観測を行い、黒潮続流中層に、波長約200kmの前線波動が存在し、この波動が下流方向に向かって振幅を増加・砕波することによって2つの異なる水塊が効率良く混合することが明らかとなった。