著者
阿部 誠 守口 剛 八島 明朗
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-12, 2015 (Released:2015-07-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1

行動経済学では,時間軸における選好の逆転現象を割引で説明する場合が多い.一方,心理学や行動意思決定理論の分野では,時間を含めた心理的距離の変化による選好の逆転を解釈レベル理論の枠組みで分析する研究が多数,存在する.本研究では,割引の概念を解釈レベル理論に組み込んだ割引解釈レベルモデル(DCLM)を提案する.具体的には,割引の適用を時間も含めた一般的な心理的距離に拡張し,割引傾向の違いに関する2つの要因,量的効果と符号効果を仮定する.本論文では,これらを3つのプロポジションとして提案し,ロトの選択に関するアンケート調査に基づいて統計的に検証する.その結果,DCLMが時間軸も含めた一般的な心理的距離の変化による選好の逆転を説明,予測できることを示す.
著者
外川 拓 八島 明朗
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_65-2_94, 2014 (Released:2018-08-31)
参考文献数
64

近年の消費者行動研究においては、解釈レベル理論の導入が盛んに進められている。しかしながら、各研究は個別的に行われており、全体を体系づけた研究は行われていない。そこで本研究では、マーケティングおよび消費者行動研究関連のジャーナルを対象としたレビューを行うことにより、既存研究における知見の整理と体系化を図った。既存研究を4つのグループに分類しレビューした結果、研究の進展に伴い、解釈レベル単独の効果に注目した研究から他の理論を取り入れた研究へと潮流が変化していることや、消費者行動研究において解釈レベル理論の位置づけが変化していることなどが明らかになった。最後に、レビュー結果を踏まえ、消費者行動研究において解釈レベル理論を導入することの意義と課題について議論を行った。