著者
篠原 ひとみ 松原 まなみ 内山 健志
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.12-21, 2011-04-25
被引用文献数
1

口唇裂・口蓋裂治療チームにおける授乳援助の実態および唇顎口蓋裂児の母乳育児に対する考えを明らかにすることを目的に,日本口蓋裂学会に登録されている全国の口唇裂・口蓋裂手術に携わる324の医療機関にアンケート調査を行った。その結果130施設から回答があり以下のような所見が得られた。<br>1.唇顎口蓋裂児の初診時の直接母乳の割合は,1割以下の施設が約50%であり,裂型に関係なく30%の施設は直接母乳の状態が把握できていなかった。<br>2.ほとんどの施設で授乳指導が行われ,約半数の施設は人工乳首の選択方法や専用乳首の使い方などのビン哺乳の指導だけであった。母乳栄養の指導は48%の施設が行っていた。<br>3.授乳困難時に勧めている乳首は72%がP型乳首で最も多く,次いでヌーク口蓋裂乳首39%,チュチュ口蓋裂用乳首34%であった。<br>4.口唇裂手術直後の授乳方法は35%が術前と同じ方法を行い,それ以外は傷の安静目的に細口哺食器,栄養チューブ,スプーンなどを使用していた。<br>5.唇顎口蓋裂児の直接母乳は82%の施設が「状況により可能」と考え,57%の施設が直接母乳の「援助が必要」と考えていた。<br>6.直接母乳に向けた改善策は,「出生直後からの診療チームのアドバイス」64%,「産科スタッフの授乳ケアの熟知」48%であったが,それを実施するための産院との連携システムがある施設は21%であった。また,直接母乳に向けた「口蓋床の改良」が48%であり,「専用乳首の改良」は33%であった。
著者
須賀 賢一郎 内山 健志 坂本 輝雄 吉田 秀児 村松 恭太郎 渡邊 章 澁井 武夫 田中 潤一 中野 洋子 高野 伸夫
出版者
Japanese Cleft Palate Association
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.320-325, 2009-10-30
被引用文献数
1

顎間骨が位置異常を示す両側唇顎口蓋裂術後患者に対して,唇側からの顎間骨の骨切りと顎裂部の骨移植を同時に行う顎間骨整位術の有用性を本学会雑誌の21巻2号に報告した。しかし,この到達法は,顎間骨部への血行の考慮と骨切り操作の点において検討の余地があることが判明した。そこで,1996年4月から2009年3月までの13年間に,同様の症状を呈した17名の両側唇顎(口蓋)裂術後患者に対し,口蓋側から顎間骨への到達と骨切りを行なったところ,以下の結論を得た。<br>1.全症例とも本到達法と骨切りは安全かつ容易に行えた。<br>2.切歯歯根尖より充分距離をおいた顎間骨の骨切りが可能であった。<br>3.顎間骨移動時の骨干渉部の削合も頭部の後屈で容易に行えた。<br>4.以上のことから,顎間骨整位術を施行する場合,顎間骨部への到達と骨切りは口蓋側から行うべきであることを推奨する。