著者
内田 まり子 中村 透 山縣 浩 佐藤 幸子 浅野 真晴 秋保 明 阿部 直子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.6, pp.71, 2005

財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターでは、平成13年11月から平成17年3月まで、仙台市による地域リハビリテーションモデル事業の一環である中途視覚障害者生活訓練事業の委託を受け、訪問による視覚障害リハビリテーションサービスを実施した。このサービスを利用した仙台市民の人数は、平成13年度および平成14年度は16名、平成15年度は16名、平成16年度は23名であった。のべ55名のケースについて、支援に関係した施設および機関は、当訓練センターのみではなく、地域に存在する複数だったケースが大半を占めた。その他、ケースの概要と傾向をまとめ、地域にある複数の関係機関どうしの関わりや支援システムの動きなどについて報告する。 また、受傷後およそ3年間、引きこもりに近い生活をしていたケースが地域のデイサービス利用をきっかけに視覚障害リハビリテーションサービスを利用し、交流会(「仙台市における中途視覚障害者リハビリテーション支援システム第3報」にて発表)にも参加を始めたケースを報告し、地域に住む視覚障害者に提供できるリハビリテーションサービスについて考察したい。
著者
原田 敦史 内田 まり子
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.86, 2012

<B>【はじめに】</B><BR> 日本盲人委員会が立ち上げた東日本大震災視覚障害者対策本部の現地の支援員として、1年間活動をしてきた。災害規模が大きくその支援は困難を極め、中でも支援を行うための準備は急を要したが、残念ながらすぐに活用できるものは多くはなかった。我々は第一次から第三次の支援に際して、当てのないまま支援物資の準備と資料の作成を行った。今回の報告では、災害時にはどんな物資が必要で、どのような情報があったのか、それを活用するためにどんなマニュアルを作成したのか、今後も活用できる部分を中心に紹介する。<BR><B>【現地の支援活動】</B><BR> 対策本部では、岩手県と宮城県の避難所を中心に約750か所を訪問し視覚障害者を探して支援を実施した。また安否の確認ができなかった方、支援の要望があった方の自宅を訪問し支援を実施した。その数は300件近くとなった。<BR> これら支援の交通手段は車で、その際には支援グッズを積んで回った。<BR><B>【準備をしたもの】</B><BR>○物資について<BR> 最初はラジオや、携帯の充電器、白杖、音声時計、乾電池を準備した。その後は支援団体から届いた物資を加えながら増やしていった。<BR>○情報について<BR> スーパー開店状況等の食料事情や医療機関の情報は多くの被災者が必要とした。また視覚障害者支援団体や業者より様々な支援策が実施されていた。それらをまとめて一つの情報にして資料を作成した。これには随時新しいものを加えていった。<BR>○マニュアル・個別表について<BR> 第一次の避難所中心の訪問から第三次の個人宅中心の訪問まで、マニュアルは三回とも更新した。また対応したことが分かりやすいように個別対応表も作成し、これも更新をしていった。その場でメモを取らなくてはいけないことは何か、今後必要になってくる情報はなにか模索しながら資料を更新していった。<BR><B>【まとめ】</B><BR> 阪神大震災でも視覚障害者支援は実施されたが、役に立った物資等については、報告内に少しはでてくるものの、細かい資料等は残っておらず、一から資料作成をした状態であった。また何を聞くべきか、何を残すべきか、どんな支援物資を届けるべきか、常に考えているものの、答えが出ないものでもあった。ただし、被災地支援に関わったものとして、一つのまとめを残す必要があるかと考え、また、実際の支援にも役に立った部分もあるので、今後の支援準備の参考になればと思う。
著者
畑野 容子 中口 潤一 原田 敦史 内田 まり子
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.42, 2010

【はじめに】 2009年度から日本盲導犬協会 島根あさひ訓練センター(以下、当協会)では、中四国地方在住の視覚障がい者を対象に1週間の入所生活訓練を行う「視覚障がい短期リハビリテーション」(以下、短期リハ)を開始した。事業を利用したAさんの支援を香川県視覚障害者福祉センター(以下、福祉センター)と連携して行い、生活に変化をもたらすこととなった。その経過を報告する。【ケース】ケース:Aさん、右)0 左)光覚、30代女性、未婚、6人家族、自宅は中山間地域。生活状況:中学から盲学校に入学し、保健理療科へ進学したが免許取得はならず就職できなかった。卒後、現在に至るまで外出の機会は少なく、昼夜逆転の生活となり、一日の大半は自宅で録音図書を聞いて過ごしていた。障害基礎年金受給中。家計に余裕はない。【経過】・数年前に家族の意向で免許取得に向け福祉センターの在宅訓練を受けたが、モチベーションが保てず中断となった。・昨秋、福祉センターの訓練士が短期リハを勧めたことで参加。その後は、生活改善の意欲が高まり、更生施設への入所希望が聞かれるようになった。・当協会と福祉センターが自宅を訪問し、家族を含め希望・目標を確認。現在は福祉センターで歩行・点字の通所訓練を行い、秋には施設見学に行く調整を行っている。【考察】 Aさんの訓練を行ったことで10年間の引きこもり生活の要因が浮かび上がってきた。第1に地域的な要因である。10年前は福祉センターの在宅訓練はなかった。盲学校卒業後、近隣に相談できる場所がなく、適切な支援が受けられるような環境になかった。このためAさんの積極性が徐々に低下したと推測できる。第2に、Aさんの障害年金が家計の一部を補っているという要因である。就職して家計を助けたいという気持ちはあるが、自宅を出ることで家族に負担がかかると心配する面もあり、なかなか具体的な動きを取らなかった。第3に家族関係の要因である。Aさんの自立を応援する意思を示してきたが、経済的なことを懸念しているためか、現実的な話になるとあまり積極的ではない印象を受ける。現在はAさんの歩行・点字技術の向上とモチベーションの維持を目的に相談支援専門員にも経過を報告し、連携して継続的な支援を行っている。居住地域・生活状況によって本人の意向を汲み取るような適切なサービスが受けられない視覚障がい者の存在を改めて感じたケースとなった。
著者
笹山 夕美絵 原田 敦志 菅原 美保 内田 まり子 善積 有子
出版者
視覚障害リハビリテーション協会
雑誌
視覚障害リハビリテーション研究発表大会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21, 2011

<B>【はじめに】</B><BR> 当協会では、仙台市在住者に対し、訓練事業委託元である仙台市の身体障害者更生相談所(以下、更生相談所)、相談事業を受託しているアイサポート仙台(以下、アイサポート)と連携して在宅訓練を実施している。今回は、ある当事業利用者に対して実施した生活訓練を通して、支援のタイミングと連携について、経過を報告する。<BR><BR><B>【ケース】</B><BR>Aさん:糖尿病性網膜症(合併症:腎不全)50代単身女性。現在視力、右)0.01左)0<BR><BR><B>【経過】</B><BR>2004年8月 地元病院で糖尿病性網膜症と診断。視力右)0.1左)0。<BR>2008年頃 東北大学病院(以下、大学病院)にて白内障手術実施。<BR>2009年10月末 視力低下右)0.08左)0。<BR>2010年5月 大学病院にて網膜剥離の手術実施。視力低下が続き右)0.02左)0。入院時に地域医療連携室より、生活保護ケースワーカーとアイサポートに連絡が行き、アイサポートから当協会へと繋がった。この間の生活では一人で外出が出来なくなり、買い物やゴミ捨ても出来ず、食事も作れず、友人にその全てを頼んでいたがとても不便だったとのこと。<BR>2010年6月 当協会の在宅訓練を開始。科目は歩行とADLで実施。このときアイサポートを通じて移動支援やホームヘルパーの利用、生活保護ケースワーカーから腎臓食の配達の手配等、生活基盤の安定を訓練と同時に進めた。<BR>2010年10月 視力は右)0.04左)0。<BR>2010年11月末 眼圧が上がり大学病院に入院。約2ヵ月訓練停止。訓練としてはいつでも再開できる旨を伝え、定期的に連絡をする。目も落ち着き右)0.06左)0。<BR>2011年2月 訓練再開。<BR>2011年3月 震災後、さらに視力が低下し右)0.01左)0。訓練継続中。<BR><BR><B>【考察】</B><BR> Aさんは、医療現場から相談機関、訓練機関につながったことで生活基盤の安定と訓練を同時に進めることができた。特に、2010年11月末には眼圧が上がり入院したことで、若干精神的に落ち込んだようだが、"先のことを相談できる機関があったことで安心感があった"との発言が聞かれた。地域の社会資源が連携し、タイミングよくサービスを提供することで、視機能が徐々に低下していく中でも不安感が高くならず、訓練をスムーズに進めることができたと思われる。