著者
内田 浩史 郭 チャリ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.428-433, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

本稿の目的は,日本における創業と創業金融の実態を明らかにすることである。4つの異なるアンケート調査から得られた5つの創業企業サンプルを用いて比較分析を行った結果,創業企業には様々なタイプが存在すること,タイプによって創業金融の実態も異なることが明らかになった。特に,創業企業の多くは創業資金を経営者の自己資金に依存しているが,その程度はサンプルにより異なり,他の資金調達手段の利用にも違いが見られること,資金制約に直面している企業は少数派であるものの,サンプルによりその程度に差があることが示された。本稿ではこうした結果を詳述し,日本における創業の課題に対処するための政策的含意を導く。
著者
内田 浩史 忽那 憲治 本庄 裕司 胥 鵬 家森 信善 結城 武延 畠田 敬 山田 和郎 高橋 秀徳
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、前年度からの実態把握をさらに進め、創業ファイナンスの全体像を捉えるとともに、資金制約などに関してより厳密な研究を進め、実務・政策インプリケーションを引き出すための準備を行った。実態把握に関しては、前年度に整備した創業企業データに関し、記述的な分析を包括的に行い、創業企業のタイプを整理した。そのうえで、資金調達に関する情報が得られる企業については調達の実態把握を進めた。資金調達に関する情報が得られない企業についてはより詳細な実態と資金調達に関する情報を得るため、企業向けアンケート調査とインターネット調査を実施して直接データを収集した。各調査の結果はサマリー論文としてとりまとめ、発表した。創業金融に関する研究としては、ベンチャー企業に対するアクセラレーター・ベンチャーキャピタルの役割、IPO市場の特徴と引受会社の選択や引受手数料の決定要因、創業企業の資本構成、収益性と成長性の関係、起業家の人的資本と資金調達の関係などに関して研究を行った。また、創業金融に関する分析の参考となる基礎研究として、日本の銀行市場の状況と金融システムの歴史的変遷、中小企業と銀行の関係、資金調達とイノベーションの関係、金融機関の人材管理、金融機関の効率性、昭和恐慌時の銀行破綻の実態、企業の投資行動、中小企業への政策的支援の意義、証券市場でのディスクロージャーやアナリストの役割などに関して研究を行った。これらの研究は論文・学会発表の形で発表した(「研究発表」欄参照)。2017年5月19日には、欧州・日本の研究者・実務家を招いた国際シンポジウム『アントレプレナーシップと経済活性化』を、関西大学経済政治研究所,関西学院大学産業研究所・イノベーション研究センター・経済学セミナーとともに共催し、起業家やスタートアップ企業の成長や育成のための課題を議論した(会場:関西学院大学大阪梅田キャンパス)。