- 著者
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花枝 英樹
胥 鵬
鈴木 健嗣
- 出版者
- 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
- 雑誌
- 現代ファイナンス (ISSN:24334464)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, pp.69-100, 2010-09-30 (Released:2018-12-07)
- 参考文献数
- 58
- 被引用文献数
-
2
わが国全上場企業を対象にM&Aに関するサーベイ調査を行い,回答企業526社の分析からつぎのような結果を得た.第1に,近年の日本におけるM&Aの主目的は市場シェア拡大の水平的なM&Aが中心で,実際に成果があったと意識されている.しかし,ブランドカや研究開発力といった見えざる経営資源の有効活用については成果が少ない.第2に,M&Aに際しての人員,給与体系,事業部門の調整の仕方の違いがM&Aの効果に大きな影響を及ぼしている.第3に,70%近い企業が成熟衰退事業を現在・今後抱えると答えており,雇用維持を配慮した対処に腐心している.第4に,敵対的買収に対して否定的な考え方が強いが,敵対的買収に対する備えとしては,業績改善,IRの充実,株主への利益還元を重視している.また,防衛策として株式持合いも重視しており,事前警告型買収防衛策を導入すれば株式持合いは必要ないと考えるのではなく,両者をむしろ補完的に考えている.