著者
佐々木 隆文 佐々木 寿記 胥 鵬 花枝 英樹
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.19-48, 2016-03-31 (Released:2018-12-07)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究では日本企業を対象に流動性保有の動機,目的をアンケートにより調査し,(1)日本企業においても米国を含めた外国企業と同様,予備的動機が余剰資金保有の最も重要な動機となっていること,(2)日本企業における余剰資金保有では,消極的な予備的動機(将来のキャッシュフロー不足への備え)のみでなく,積極的な予備的動機(将来,予想外の投資機会が生じた場合への備え)も同じぐらい重要な動機となっていること,(3)当座貸越の利用やメインバンクへの信頼感がコミットメントライン未設定の要因になっていること,(4)余剰資金保有の背景に直接金融へのアクセスが限定されているとの認識があること,(5)銀行への信頼感は積極的な予備的動機による余剰資金保有のみを代替し,消極的な予備的動機による余剰資金保有を代替しないこと,(6)ガバナンスのあり方が流動性手段の選択に影響を及ぼすなどの知見を得た.
著者
花枝 英樹 芹田 敏夫 宮川 公男 胥 鵬 須田 一幸 広田 真人 木村 由紀雄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

(1)「日本企業の配当政策・自社株買い-サーベイ・データによる検証-」概要:わが国全上場企業を対象にペイアウト政策についてのサーベイ調査を行い、つぎのような結果を得た。配当決定は投資決定とは独立に行われており、減配回避の考えが非常に強い。一方,自社株買いは配当と比べれば柔軟性をもって決められている。情報効果仮説については,配当・自社株買いとも支持する結果が得られた.ペイアウト政策を敵対的買収防止手段として考えている企業が多く,株主構成の違いもペイアウト政策の意識に影響を及ぼしている。(2)"The choice of financing with public debt versus private debt: New evidence from Japan after critical binding regulations were removed"概要:成熟企業と成長企業の資金調達と社債発行との関連を分析した。とりわけ、日本の経験から、最も有効な社債市場育成策は、銀行の利権を保護する規制を緩和し、社債と銀行借入の選択を企業に委ねるべきことを提案している。(3)"Ownership structure and underwriting fee: Evidence from Japanese IPOs"概要:企業の株式所有構造と新規公開時の引受手数料,IPO後の長期パフォーマンスの間の関係について,1997年から2002年にJASDAQへIPOした企業サンプルを用いて検証した。(4)"Financing constraints and Research and Development Investment"概要:わが国企業の研究開発投資と資金調達の関係を実証分析し、特に、キャッシュフローの多寡で表せる内部資金制約が研究開発投資の大きさに大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。
著者
花枝 英樹 胥 鵬 鈴木 健嗣
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.69-100, 2010-09-30 (Released:2018-12-07)
参考文献数
58
被引用文献数
2

わが国全上場企業を対象にM&Aに関するサーベイ調査を行い,回答企業526社の分析からつぎのような結果を得た.第1に,近年の日本におけるM&Aの主目的は市場シェア拡大の水平的なM&Aが中心で,実際に成果があったと意識されている.しかし,ブランドカや研究開発力といった見えざる経営資源の有効活用については成果が少ない.第2に,M&Aに際しての人員,給与体系,事業部門の調整の仕方の違いがM&Aの効果に大きな影響を及ぼしている.第3に,70%近い企業が成熟衰退事業を現在・今後抱えると答えており,雇用維持を配慮した対処に腐心している.第4に,敵対的買収に対して否定的な考え方が強いが,敵対的買収に対する備えとしては,業績改善,IRの充実,株主への利益還元を重視している.また,防衛策として株式持合いも重視しており,事前警告型買収防衛策を導入すれば株式持合いは必要ないと考えるのではなく,両者をむしろ補完的に考えている.
著者
内田 浩史 忽那 憲治 本庄 裕司 胥 鵬 家森 信善 結城 武延 畠田 敬 山田 和郎 高橋 秀徳
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、前年度からの実態把握をさらに進め、創業ファイナンスの全体像を捉えるとともに、資金制約などに関してより厳密な研究を進め、実務・政策インプリケーションを引き出すための準備を行った。実態把握に関しては、前年度に整備した創業企業データに関し、記述的な分析を包括的に行い、創業企業のタイプを整理した。そのうえで、資金調達に関する情報が得られる企業については調達の実態把握を進めた。資金調達に関する情報が得られない企業についてはより詳細な実態と資金調達に関する情報を得るため、企業向けアンケート調査とインターネット調査を実施して直接データを収集した。各調査の結果はサマリー論文としてとりまとめ、発表した。創業金融に関する研究としては、ベンチャー企業に対するアクセラレーター・ベンチャーキャピタルの役割、IPO市場の特徴と引受会社の選択や引受手数料の決定要因、創業企業の資本構成、収益性と成長性の関係、起業家の人的資本と資金調達の関係などに関して研究を行った。また、創業金融に関する分析の参考となる基礎研究として、日本の銀行市場の状況と金融システムの歴史的変遷、中小企業と銀行の関係、資金調達とイノベーションの関係、金融機関の人材管理、金融機関の効率性、昭和恐慌時の銀行破綻の実態、企業の投資行動、中小企業への政策的支援の意義、証券市場でのディスクロージャーやアナリストの役割などに関して研究を行った。これらの研究は論文・学会発表の形で発表した(「研究発表」欄参照)。2017年5月19日には、欧州・日本の研究者・実務家を招いた国際シンポジウム『アントレプレナーシップと経済活性化』を、関西大学経済政治研究所,関西学院大学産業研究所・イノベーション研究センター・経済学セミナーとともに共催し、起業家やスタートアップ企業の成長や育成のための課題を議論した(会場:関西学院大学大阪梅田キャンパス)。
著者
胥 鵬 森田 果 田中 亘 蟻川 靖浩 松井 建二 内田 交謹 湯前 祥二 宮崎 憲治 竹口 圭輔 武智 一貴
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ヘッジ・ファンド・アクティビズム、経営判断の原則、防衛策、株式持合、普通社債市場の発展、銀行株式保有制限法による銀行持株比率の低下、子会社役員等への親会社ストック・オプション付与などの様々な側面から日本における企業統治の新展開及びその効果について、理論・実証分析を行った。その研究成果は、多数の図書・雑誌論文・学会発表として公表された。