著者
内藤 真帆
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.153-176, 2009 (Released:2021-09-15)
参考文献数
9

本論文の目的は,ヴァヌアツ共和国のツツバ語で,移動の経路を表す三つの動詞sae「のぼる」,sivo「くだる」,vano「行く,横切る」が何に依拠して使い分けられているのかを明らかにすることである。はじめにこの三つの動詞についての説明を行い,続いてツツバ語話者がツツバ島内を移動する際の移動表現,副都心の置かれるサント島内を移動する際の移動表現,ツツバ島から他島へ移動する際の移動表現について考察する。そしてツツバ語において,移動の経路を表す三つの動詞sae「のぼる」,sivo「くだる」,vano「行く,横切る」が,①物理的な上下による対立,②心理的な上下による対立,③歴史的理由により生じた対立,という三つのカテゴリーにおいて使い分けられていることを示す。さらに,これらのカテゴリーにおける三つの動詞の関係について明らかにする。
著者
内藤 真帆
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.181-200, 2015-03

ヴァヌアツ共和国のツツバ語は、話者数およそ500人の消滅の危機に瀕した言語である。この言語には舌先と上唇とで調音する舌唇音という希少音が存在するが、現在この音は唇音へと音変化しつつある。その要因としては第二次世界大戦下の人口減少と国語ビスラマ語の影響が考えられる。またツツバ語の句構造も変化しつつあり、この要因としては近代化による他言語話者との接触の影響が考えられる。本論文では2001年から今日までの現地調査のデータをもとに、若年齢層と高年齢層の①音声と②句構造を比較する。そして世代間の差異を明らかにするとともに、ツツバ語が変化しつつある要因を、戦争・近代化・国語・教育言語の影響といった観点から、時系列に沿って考察する。The Tutuba language spoken by approximately 500 people in the Republic of Vanuatu is an endangered language. This language has speech sounds which are known as apicolabials. In the Tutuba language, a sound shift from apicolabials to labials is now occurring. In addition, the structure of noun phrases is also now changing, especially among the young.This paper will discuss the factors behind these changes from the viewpoint of the influences of World War Ⅱ, modernization, national language, and educational languages by analyzing research data collected from 2001 to 2014.
著者
内藤 真帆
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.181-200, 2015-03

ヴァヌアツ共和国のツツバ語は、話者数およそ500人の消滅の危機に瀕した言語である。この言語には舌先と上唇とで調音する舌唇音という希少音が存在するが、現在この音は唇音へと音変化しつつある。その要因としては第二次世界大戦下の人口減少と国語ビスラマ語の影響が考えられる。またツツバ語の句構造も変化しつつあり、この要因としては近代化による他言語話者との接触の影響が考えられる。本論文では2001年から今日までの現地調査のデータをもとに、若年齢層と高年齢層の①音声と②句構造を比較する。そして世代間の差異を明らかにするとともに、ツツバ語が変化しつつある要因を、戦争・近代化・国語・教育言語の影響といった観点から、時系列に沿って考察する。The Tutuba language spoken by approximately 500 people in the Republic of Vanuatu is an endangered language. This language has speech sounds which are known as apicolabials. In the Tutuba language, a sound shift from apicolabials to labials is now occurring. In addition, the structure of noun phrases is also now changing, especially among the young.This paper will discuss the factors behind these changes from the viewpoint of the influences of World War Ⅱ, modernization, national language, and educational languages by analyzing research data collected from 2001 to 2014.