著者
内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.19, no.01, pp.162, 2019-03-20 (Released:2020-04-10)
参考文献数
26

第二言語習得研究において文法知識は暗示的知識と明示的知識の総体であると捉えられる。これまでの中学校以降の英語教育では明示的知識の獲得とその自動化が目指されてきたが,小学校段階では定型表現依存型の暗示的文法知識の獲得を目指すべきである (板垣, 2017)。しかしながら日本人小学生の文法知識を対象にした実証研究はこれまでにほとんど行われておらず,少ない先行研究の中にも明示的知識,暗示的知識の別を明らかにしたものはない。そこで本研究では公立小学校 6 校の小学 5, 6 年生 446 名を対象とし,時間制限付文法性判断課題 (TGJT) とメタ言語知識課題 (MKT) を用いて児童の暗示的知識,明示的知識を測定することを試みた。分析の結果,TGJT の全体正答率は 48.1%でチャンスレートを下回った。この値は先行研究の結果と比べて低く,先行研究で用いられた文法性判断課題においては児童が明示的知識,暗示的知識の両方を活用して回答していた可能性が示唆された。 また MKT の全体正答率は 47.5%であり,暗示的指導が中心の小学校英語教育であっても児童は明示的知識を獲得することが可能であることが示唆された。また各課題の正答率には言語項目によってばらつきがあり,児童が知識を獲得しやすい言語項目とそうでない項目があることが明らかになったほか,各課題の正答率は 5 年生よりも 6 年生のほうが有意に高く,小学校英語教育を通した明示的,暗示的知識の学習可能性が裏付けられた。これらの結果に基づき,小学校段階での文法指導のあり方について示唆を行った。
著者
萬谷 隆一 堀田 誠 鈴木 渉 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.22, no.01, pp.200-215, 2022-03-20 (Released:2023-04-01)
参考文献数
110
被引用文献数
1

本研究の目的は,小学校英語教育学会での研究のあゆみを整理して俯瞰することで,これまでの研 究の成果と課題を明らかにし,今後の方向性を示唆することである。本研究においては小学校英語教 育学会の紀要・学会誌の論文を整理分類し,客観的にその傾向を見出すことに努めながらも,学問的 意義・実践的な意義の視点からの解釈を含めたナラティブレビューの手法を取った。『小学校英語教育 学会紀要』(第 1 号~第 11 号)及び JES Journal(Vol. 12~Vol. 21)に収録されている全論文(N = 242) を分析対象とし,タグ付けにより 19 の研究分野に分類した。また発行時期を,2008 年以前,2009~ 2017 年,2018 年以降の 3 期に分け検討した。分類の結果,最も多かったのは「教材」であり,次いで 「第二言語習得」が多かった。一方で,論文数が少なかったのは「特別支援教育」と「教師の発話」 であった。論文数の増減傾向から,4 つのタイプの研究分野が見受けられた。1)どの期間においても 一定の論文が投稿されていたカテゴリ(例:「指導法」「指導者」),2)どの期間においても論文数が少 なかったカテゴリ(例:「聞くこと」,「教師の発話」,「特別支援教育」),3)時代を経るにしたがって 論文数が増えているカテゴリ(例:「第二言語習得」,「教材」,「情意」),4)時代を経るにしたがって 論文数が減っているカテゴリ(例:「教員養成・研修」,「小中連携」)が見受けられた。
著者
酒井 英樹 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.100-115, 2018

<p><tt>本論文は,「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」(東京学芸大学</tt>, 2017<tt>)が提案する知識・技能及び英語運用能力の点から,小学校教諭免許状の取得を希望する大学生が大学における養成期間中に何を学び,身に付ける必要があるのかを調べるために行った調査研究の結果を報告するものである。初等英語科指導法の受講生に対して「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」の項目の理解度及び自身の英語力の自己評価を問う質問紙調査を行った。また,受講生から</tt>TOEIC <tt>の得点を得た。受講生のうち</tt>2 <tt>年生</tt>103 <tt>名の回答を分析した。その結果,全ての項目について自己評価が低かったが,特に指導法に関する内容についての項目の自己評価が低かった。英語力の自己評価については,受容能力に比べて産出能力の自己評価が低かった。コア・カリキュラムで求めている</tt>B1 <tt>レベルについては,読むことについては</tt>59.2%<tt>の学生が肯定的な自己評価(「ややできると思う」と「できると思う」)をしていたが,聞くこと,話すこと[やり取り],書くこと,話すこと[発表]の順で肯定的な回答の割合が少なくなり,話すこと[発表]については</tt>27.3%<tt>の学生しか肯定的な自己評</tt><tt>価 </tt><tt>をしていなかった。また,英語運用能力については,コア・カリキュラムで提案している</tt>B1 <tt>以上に達している学生は</tt>19 <tt>人(</tt>18%<tt>)であった。これらの結果に基づき,カリキュラムの改善・充実のための示唆を考察した</tt><tt>。 </tt></p>
著者
酒井 英樹 内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.18, no.01, pp.100-115, 2018-03-20 (Released:2019-04-08)
参考文献数
9

本論文は,「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」(東京学芸大学, 2017)が提案する知識・技能及び英語運用能力の点から,小学校教諭免許状の取得を希望する大学生が大学における養成期間中に何を学び,身に付ける必要があるのかを調べるために行った調査研究の結果を報告するものである。初等英語科指導法の受講生に対して「小学校教員養成外国語(英語)コア・カリキュラム」の項目の理解度及び自身の英語力の自己評価を問う質問紙調査を行った。また,受講生からTOEIC の得点を得た。受講生のうち2 年生103 名の回答を分析した。その結果,全ての項目について自己評価が低かったが,特に指導法に関する内容についての項目の自己評価が低かった。英語力の自己評価については,受容能力に比べて産出能力の自己評価が低かった。コア・カリキュラムで求めているB1 レベルについては,読むことについては59.2%の学生が肯定的な自己評価(「ややできると思う」と「できると思う」)をしていたが,聞くこと,話すこと[やり取り],書くこと,話すこと[発表]の順で肯定的な回答の割合が少なくなり,話すこと[発表]については27.3%の学生しか肯定的な自己評価 をしていなかった。また,英語運用能力については,コア・カリキュラムで提案しているB1 以上に達している学生は19 人(18%)であった。これらの結果に基づき,カリキュラムの改善・充実のための示唆を考察した。
著者
内野 駿介
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.83-94, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
7

本稿は,全国の大学で開講されている外国語活動の指導に関する講義の開講形態及び授業内容に関する実態調査の報告である。小学校教員養成課程の設置されている全国の国公立大学及び東京都に所在する私立大学において,平成26年度(一部大学は平成25年度)に開講されている講義のカリキュラム及びシラバスを分析した。 対象とした大学の90%弱で少なくとも1つの講義が開講されており,大部分の学生に外国語活動の指導のあり方について学ぶ機会があることがわかった。開講講義数は小学校英語専攻を設置している大学で最も多く,英語専攻はあるが小中の区分の無い大学や英語専攻の設置されていない大学とは著しい差が見られた。また,最も多く扱われている内容は「模擬授業」(22.86%)で,次いで「指導法」(21.25%),「教材」(9.08%),「英語力向上」(6.93%)の順であった。「模擬授業」と「指導法」が各大学で扱われている回数とその大学で開講されている授業数との間に強い正の相関が見られ(それぞれr=.85, .71),実践的な内容はどの大学でも同程度の割合で扱われていることが明らかになった。 外国語活動は英語という言語を扱う領域であり,実践的な内容を教員養成段階で扱うことは有意義である。今後教科化・時数増へと向かっていく中,本研究の結果が教員養成のカリキュラムを考える 一助となることを願っている。