著者
馬場 哲生
出版者
東京学芸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

大学生を対象として速聴タスクの効果を検証した。学習内容としては英語の音声変化を取り上げ、タスクとしては音声識別の可否を詳細に判定出来る書き取りを用いた。各被験者の使用したマテリアルは、2枚のCD-R、27頁の問題タスク冊子(7日分)、9頁の解答用紙からなる。前半の3日間が弱形・同化・連結などの性質を持つ音声素材(1日約30分)による学習であり、後半の3日間が各種リダクションを扱ったより高難易度の音声素材(1日約40分)による学習である。調査は、1)プリテスト→2)6日間のリスニング学習→3)7日目のポストテスト、からなる。前半の3日間におけるタスクは、「a)書き取りテスト⇒b)学習タスク⇒c)書き取りテスト⇒d)学習タスク⇒e)書き取りテスト」を1セットとした。後半の3日間は、「a)書き取りテスト1⇒b)学習タスク1⇒c)書き取りテスト1⇒d)書き取りテスト2⇒e)学習タスク2⇒f)書き取りテスト2」を1セットとした。学習タスクは、実験群においては、「i)スクリプトを見ながら通常スピード音声の口頭反復→ii)スクリプトを見ながら1.5倍速の口頭反復→iii)スクリプトを見ないで1.5倍速のリスニング→iv)スクリプトを見ながら2倍速の口頭反復→v)スクリプトを見ないで2倍速のリスニング」を1セットとした。統制群においては、タスクはすべて通常スピードであり、「i)スクリプトを見ないでリスニング→ii)スクリプトを見ながら口頭反復→iii)スクリプトを見ないで口頭反復→iv)スクリプトを見ながらシャドーイング」を1セットとした。タスク前後の書き取りのパフォーマンスを実験群・統制群で比較することによって、学習の効果を検証した。実験群の明確な優位性は認められず、速聴は比較的効果の実感されやすい学習直後の音声認識においても必ずしも有用であるとは言えないことが示唆された。