- 著者
-
冨士井 睦
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.2, pp.107-113, 2015 (Released:2015-08-13)
- 参考文献数
- 20
〔目的〕頭部外傷による錐体骨骨折後に, 遅発性顔面神経麻痺 (delayed facial palsy: DFP) を発症することがある。今回, 我々は顔面神経麻痺出現時に用いられるHouse-Brackmann grading system (HBS) に基づいた重症度とDFPの改善に要した期間との関連を後ろ向きに検討した。
〔対象と方法〕頭部外傷による錐体骨骨折282例のうちDFPを認めたのは33例であった。DFPの経過観察中に医学・美容上問題のないHBSⅡへ改善した時点を治癒とした。33例のDFPのうち最重症でもHBSⅡであった3例と顔面神経開放術を行なったHBSⅤの1例を除いた29例に対し, 麻痺の重症度とDFPの改善までの期間についてlog rank検定にて統計学的に検討した。
〔結果〕HBSⅤの重度群 (n=7) はHBSⅢ, Ⅳの中等度群 (n=22) に比べ統計学的有意に治癒期間が延長した (p=0.02)。後者は全例治癒に至り, 治癒に至るまでの中央値は50日, 前者では1年の経過観察後も2例で顔面神経麻痺は継続し, 治癒に至った5例の治癒に至るまでの日数の中央値は93日であった。
〔結語〕DFPはHBSによって予後予測が可能である事が示唆された。またDFPでもHBSⅤに至れば顔面神経麻痺を後遺する可能性がある。