著者
渋谷 陽二 鳥生 純一 冨田 佳宏
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.696-701, 1997 (Released:2008-04-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

A stress-induced phase transformation phenomenon is one of the hierarchical mechanical behaviors in which atomistic rearrangements are simultaneously and dually reflected to macroscopic strength of material. It has so far been recognized as one of the bifurcation problems in the fields of thermodynamics and continuum mechanics. Softening of phonon dispersion curves has also been acknowledged as precedence of transformation as well. Movements of atoms in an α-iron under uniaxial tension are first traced by the molecular dynamics (MD) simulations on the assumption of a constant applied stress ensemble proposed by Parrinello & Rahman. Stress dependency of phonon dispresion curves obtained from the deformed lattice structures are then examined. Bifurcation conditions derived from positive definiteness of strain energy in the whole deformed matters are, at the same time, investigated using analytical elastic constants defined from only an atomic configuration and the force constants which are the second derivative of an employed interatomic potential. It is found that softening of phonon dispersion curves, especially the long-wavelength acoustic branch, could correspond to the macroscopic bifurcation conditions over the scale.
著者
冨田 佳宏 中井 善一 長谷部 忠司 屋代 如月 徳田 正孝
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では,一般熱力学的負荷条件下の金属ガラスの超塑性,変形・破壊の実験的検討とその評価,比例・非比例ひずみ履歴を伴う高ひずみ速度負荷試験による実験的検討と構成式の定式化,電子顕微鏡(SEM)・原子間力顕微鏡(AFM)・ナノインデンテーション法による金属ガラスの破壊機構の観察と局所領域の応力および強度の評価を行う.平成19年度は金属ガラスの環境強度について検討した. 3.5%食塩水中・室温において,一定試験力のもとで疲労き裂伝ぱ試験を行った結果,水溶液に浸漬した直後には過渡的なき裂伝ぱ挙動が観察されたが,定常状態においては,時間基準のき裂伝ぱ速度da/Dnは,応力拡大係数Kこよらずほぼ一定となった.3.5%食塩水中・室温において,繰返し試験力を負荷してき裂伝ぱ試験を行った結果,繰返し速度および応力比によらず,時間基準のき裂伝ぱ速度心da/dtが,最大応力拡大係数K_<max>によって規定されており,その関係は,前述の一定試験力におけるda/dt-K関係とほぽ一致していた.また, 0.05%, 0.01%食塩水中においてもき裂伝ぱ挙動を調べた結果,いずれの食塩濃度においても,1サイクル当たりのき裂伝ぱ速度da/Dnは大気中よりも大きく加速したが,超純水中におけるda/Dn-ΔKは大気中とほぼ一致していた.また,食塩水中の繰返し試験力下の破面形態は,一定試験力下の破面形態と同様であったが,超純水中の破面は,大気中における破面と同様であった.また,環境強度と直接結びつくものではないが,分子動力学による検討では,原子弾性剛性係数Bij^αの正値性(局所格子不安定性)により,構造のないアモルファスに欠陥の中の欠陥というべき不安定原子が存在すること,0.2%ひずみ以降,不安定原子が増加しており,塑性変形の担い手として新たな欠陥が導入されていること,などを明らかにした.
著者
冨田 佳宏 長谷部 忠司 屋代 如月 高木 知弘
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

分子動力学, 離散転位動力学, 連続転位理論, フェーズフィールド法, 結晶塑性理論, 均質化法, 有限要素法を駆使し, ナノからマクロに至る材料の複数の階層の組織形成と応答をシームレスに結合するモデルを構築し, 変形, 相変態等によって創生する微視組織の予測と対応する材料の力学特性の評価も可能とする。加えて、材料組織形成制御による所望の力学的特性を具備した材料の創生への途を開く。
著者
冨田 佳宏 中井 善一 屋代 如月 安達 泰治 岩本 剛 比嘉 吉一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

変形誘起変態が変形,応力,温度,ひずみ速度によって影響され易い性質を最大限活用して,変形誘起相変態の発生に伴う微視組織の創生ならびに成長を制御し,使用目的に応じた,材料の強度,延性,靭性等の機械的特性を発現させることを目指し,実験によりマイクロからマクロスケールに至る変形誘起相変態現象を詳細に検討し,以下に示す各スケールにおける変態のメカニカルモデルを構築し,その応用の可能性を示した.1.分子動力学的手法を用いて,結晶格子構造の安定性を評価することにより,マイクロスケールの相変態発生過程を検討し,対応した相変態のマイクロメカニカルモデルを構築した.2.結晶方位に依存したマルテンサイト構造を考慮しつつ,メゾスコピックなマルテンサイトエンブリオの発生とその成長を表現可能なメゾメカニカルモデルを構築した.3.近い2つの階層のモデルに均質化法を適用することによりこれらを連結し,マイクロ・メゾとメゾ・マクロメカニカルモデルを構築し,マルチスケールメカニカルモデルを提案した.4.相変態のマルチスケールメカニカルモデルにより,材料に発生するひずみ,応力,ひずみ速度,温度等のマクロスケールの物理量を操作することにより変形誘起変態を誘導することによって所定の特性を具備する材料の創生方法を提案した.5.磁気力顕微鏡によって得られたマルテンサイト相の分布形態ならびにそれを平滑化して得られた体積含有率と提案したモデルによるシミュレーションによって得られた結果を比較することで提案したメカニカルモデルの妥当性を検討した.本研究によって得られた変態のメカニカルモデルをシミュレーション過程に導入することにより,メゾスケールの材料構造を制御した機能性材料の新しい創生法の提案の可能性に加えて,従来困難とされてきた,材料の機械的特性の自由な設計に対して途が開かれると同時に,形態設計と融合することで新しい設計あるいは製造技術の開発に貢献する.